第50回「湖畔と焚き火と焼き魚」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――カスミ湖。
釣りを終えたレインたちは、湖畔で焚き火を囲んでいた。
焚き火の上では、串に刺された魚が三匹、こんがりと焼かれている。
パチパチと小さく薪が爆ぜる。
魚から落ちた脂が熾火に触れる……。
ジュウ……と食欲をそそる音が響いた。
香ばしい匂いが辺りへ広がっていく。
その様子は、配信に映し出されていた……。
レインがカメラへ向かって、元気よく宣言する。
「釣りからのお料理ですっ!」
アイリスが焼いている魚を見ながら苦笑する。
「おなかを掃除して、焼いてるだけですが」
『うまそう!』
『僕も食べたい!』
『これはお腹が減る』
レインは焚き火を指差した。
「ここ注目ー!」
カメラが焚き火へ向く。
レインは少し得意げに説明を始めた。
「これは熾火っていってね、煙がほとんど出なくなった状態なのねっ!」
薪の炎はすでに小さくなり、赤く熱を持った炭が残っている。
「火に直接当てると、煤だらけで真っ黒になるよっ! 気を付けてっ!」
アイリスはそんなレインを見て笑う。
「野営の知識は冒険者並みね……」
「そう? えへへ」
レインは照れくさそうに笑う。
コメント欄にも次々と反応が流れていく。
『確かに!』
『魔王討伐してるのに冒険者じゃないの面白い』
『見てて楽しい!』
『勉強になる配信だ!』
その間にも、魚は少しずつ焼き色を増していく……。
ナイトは女神のカメラを焼き色のついた魚へ近づけた。
ジュウ……。
脂が落ちるたびに、小さな音が響く。
画面いっぱいに、香ばしく焼けた魚が映し出された。
ナイトが渋い声で呟く。
「これは飯テロだな」
「もう少し焼けたら完成!」
レインは魚を眺めながら、待ちきれない様子で笑った。
アイリスも焼き加減を確認する。
焚き火で焼かれていた魚が、こんがりと黄金色に焼き上がった。
表面には香ばしい焼き色がつき、脂がじゅわりと光っている。
レインは串を手に取ると、嬉しそうにカメラへ向かって掲げた。
「焼けましたー! 美味しそう!」
コメント欄が一気に盛り上がる。
『おおー!』
『飯テロだ!』
『絶対うまいやつ!』
ナイトは女神のカメラをレインへ向けた。
「それじゃ、実食!」
「いただきまーす!」
はむっ――。
レインは、焼きたての魚を一口……。
そして……目がぱっと輝く。
「ウマー!」
シンプルに塩だけで味付けされた魚。
それでも、焼きたての身はふっくらとしていて、噛むたびに魚の旨味が広がる。
レインは嬉しそうに頬張っていた。
すると、アイリスが隣から声をかける。
「『ウマー!』も良いけど、食レポして!」
「食レポ!」
レインは魚を持ったまま、少し考え込む。
そして、真剣な顔で口を開いた。
「えっとね……熱くて!」
「うん」
「柔らかくて?」
「うん」
「塩が効いてる!」
アイリスは頷きながら聞いていたが、途中で少し首を傾げる。
「味をまず最初に! どんな味?」
「うーん……」
レインはもう一口、魚を食べた。
もぐもぐ……。
しっかり味わってから、答える。
「魚の味?」
一瞬、静寂が流れた……。
アイリスが頭を抱える。
「ダメだー!」
コメント欄も大爆笑だった。
『それはそう!』
『食レポになってない!』
『魚なんだから魚の味だよ!』
『レインらしい!』
ナイトは笑いをこらえながら、女神のカメラを回し続ける。
「食レポの道は、まだまだ遠そうだな」
レインは少し困ったように笑った。
「美味しいのは本当なんだけどねー!」
その言葉に、アイリスも笑う。
画面の向こうからも、次々と笑い声が届いてくる。
湖面は穏やかに揺れ、焚き火は静かに燃えている。
美味しい魚を食べて、みんなで笑う……。
そんな穏やかな時間が、カスミ湖に流れていた。
湖畔には、三人と視聴者の笑い声が広がっていく……。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




