第48回「静止画の釣り配信」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――ホミラタウンの朝。
配信を終えたレインたちは休憩していた。
アイリスが魔法通信端末の画面に表示された数字を眺めた。
「登録者、1000人超えたなぁ」
レインが画面を覗き込む。
「えっ? 凄い!」
ナイトも数字を確認する。
「ここまで増えるとは思わなかったな」
三人にとっては、かなり大きな数字だった。
アイリスは少し嬉しそうに笑う。
「魔王のコンテンツ、成功したね」
「コンテンツ言うなっ!」
レインがすぐに突っ込む。
アイリスは苦笑した。
「でも、ありがたいことではあるよ」
ナイトも頷く。
「ああ」
そして、少し真面目な表情になる。
「魔王予報を信じてくれる人が増えた証拠だからな」
アイリスは、しばらく画面を眺めていた。
やがて、ぽつりと口を開く。
「……でも、これだけに頼ってたらダメね」
「うん?」
レインが振り向く。
アイリスは指を立てた。
「魔王が全滅したら、終わったコンテンツになるよ?」
レインの顔が固まった。
そして、叫ぶ――。
「困る!」
そして、すぐに慌てて付け加える。
「……あ、いや、魔王がいなくなるのは嬉しいけど……」
「ふふっ」
アイリスが笑う。
「だから、違うことにも手を出す必要があるわね」
「次は何っ?」
レインが身を乗り出す。
アイリスは腕を組み、しばらく考え込んだ。
「……釣りでもするぅ?」
「釣り?」
レインが目を丸くする。
ナイトも少し考えた。
「そうだな……釣り配信は悪くない……」
アイリスも頷く。
「カスミ湖なら景色も綺麗だし、のんびりした配信になるでしょ」
レインの表情が一気に明るくなった。
「楽しそう! やろう!」
こうしてレインたちは……。
新たな配信企画のため、カスミ湖へ向かうことになった。
◇
――カスミ湖。
穏やかな湖面を、風がゆっくりと揺らしていた。
波紋が静かに広がっていく。
湖畔では、ナイトが女神のカメラを三脚へと変形させていた。
カメラの向きを調整し、湖へ向ける。
「よし! 始めよう!」
準備が整った。
レインがカメラへ向かって笑顔になる。
「皆さん、こんにちはー!」
「こんにちは!」
アイリスも隣で手を振る。
レインが元気よく宣言した。
「特別配信!」
そして、釣り竿を持ち上げる。
「今日は釣りやってみたい!」
「私たちの地元、カスミ湖からお届けします!」
こうして……。
釣り配信が始まった。
魔法通信を通じて、世界中から視聴者が集まってくる。
『お! なんかやってる!』
『釣りか! いいな!』
『大物期待!』
レインは釣り竿を構える。
そして、湖へ向かってゆっくりと仕掛けを投げ入れた。
ポチャン――。
水面に小さな波紋が広がる。
アイリスも隣で糸を垂らした。
「たまに釣りはやりますからね」
「まぁ、楽しいですよね」
二人は並んで湖を眺める。
湖は静かだった……。
聞こえてくるのは、鳥のさえずり。
木々を揺らす風の音。
そして、時折聞こえる水の音。
三人は釣り糸を垂らしたまま、のんびりと雑談を続けていく。
しばらくして……。
コメント欄に、少し変わった反応が流れ始めた。
『……』
『うん、これ静止画?』
『動きないな』
『声だけで耳が幸せ』
レインはコメントを見て、思わず笑った。
「はっはー! 釣れないと動きないよね!」
「確かに!」
アイリスも笑う。
ナイトはカメラ越しに、静かな湖を見つめていた。
「ホントに静止画だな」
「まだ始まったばっかりじゃん!」
レインは笑いながら、もう一度湖へ視線を戻した。
それから、しばらく待つ。
しかし……釣れない……。
レインの浮きも……。
アイリスの浮きも……。
まったく動かない……。
それでも、配信は続いていた。
『なんか落ち着く』
『こういう配信もいいな』
『仕事しながら聞いてる』
『湖の音、いいね』
『レインさんたちの雑談好き』
誰も魚が釣れない。
大きな出来事も起こらない。
ただ、穏やかな湖と三人の雑談だけが、ゆっくりと流れていく。
視聴者たちは、その時間に耳を傾け続けていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




