第45回「町長の謝罪」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――ユノハナタウンの広場。
統率の魔王が消滅したあとも、街にはまだ多くの魔物が残っていた。
そして――。
最後の戦いが続いていた。
冒険者が剣を構える。
目の前には、一匹のゴブリン。
「終わりだっ!」
冒険者が剣を振り抜く。
ズバッ!
最後の魔物、ゴブリンは倒された……。
静寂が戻る……。
冒険者たちは、互いの顔を見合わせた。
誰もが疲れ切っている。
それでも――。
「勝ったぞー!!」
誰かが叫んだ。
その声をきっかけに、街中から歓声が上がる。
「やったぞー!」
「魔王を倒したぞ!」
「街は助かった!」
その様子を、ナイトは女神のカメラで映していた。
やがて、カメラがレインへ向けられる。
レインは笑顔でうなずいた。
「皆さん、ご覧いただきありがとうございました!」
明るい声が、魔法通信を通して世界中へ届けられる。
「ユノハナタウンの魔王と魔物は、すべて討伐されました!」
コメント欄には、祝福の言葉が次々と流れていく。
『やったー!』
『助かった!』
『レインさん、ありがとう!』
『冒険者の皆さんもお疲れさま!』
アイリスもカメラへ向かって話し始めた。
「今回の魔王2号は、統率の魔王でした」
「魔物たちを従える、とても危険な魔王でしたね」
レインが続ける。
「幸い、冒険者の皆さんも、街の人たちも、観光客の皆さんも、死者はいないそうです」
「けがをされた方も、治癒魔法ですでに回復されたそうです」
レインは、ほっとしたように微笑んだ。
「本当に良かったです」
そして、カメラへ向かって手を振る。
「では、いったん配信を終わります!」
「また次回、お会いしましょう!」
ナイトが女神のカメラを止める。
「オッケー!」
そして、大きく息を吐いた。
「お疲れ!」
「お疲れさまー!」
アイリスも両手を上げて、大きく伸びをする。
「また温泉に入りたいわね」
「いいね!」
レインも笑顔になる。
ナイトも頷いた。
「今度こそ、ゆっくり入れるな」
三人が笑い合っていると……。
「レインさん」
後ろから声がかかった。
三人が振り返る。
そこに立っていたのは、ユノハナタウンの町長だった。
その隣には副町長と、町の職員たちもいる。
「えっ?」
レインが目を丸くする。
町長は三人の前まで歩み寄った。
そして――。
深々と頭を下げた。
「えぇっ!?」
レインが慌てる。
町長は顔を伏せたまま、静かに名乗った。
「私は、ユノハナタウン町長です」
「あ、この度は大変でした!」
レインが頭を下げ返そうとすると、町長はゆっくりと首を振った。
「いえ……」
そして、顔を上げる。
「謝罪させてください」
「謝罪……ですか?」
レインが首をかしげる。
町長は、ゆっくりと言葉を続けた。
「私は、あなたの魔王予報を最後まで信じ切ることができませんでした」
レインは黙って町長を見る。
「王都へ騎士団を要請することも、見送りました」
町長の表情には、悔しさが浮かんでいた。
「もし、もっと早く信じていれば……」
「もっと安全に街を守れたかもしれません」
町長は、もう一度深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
「頭を上げてください!」
レインが慌てて手を振る。
町長はゆっくりと顔を上げた。
レインは、優しく微笑んだ。
「町長さんは、何もしなかったわけじゃありません」
「……」
「冒険者の皆さんを集めてくれました」
レインは、先ほどまで戦っていた冒険者たちへ視線を向ける。
「私たちだけじゃ、あの魔物の大群には勝てませんでした」
「……そう、ですな」
「冒険者の皆さんがいたから、勝てたんです」
レインは町長を見る。
「皆で守った街です」
「だから、謝らないでください」
町長の表情から、張り詰めていたものが少しずつほどけていく。
そして――。
「……ありがとうございます」
深く頭を下げた。
レインは少し照れくさそうに笑う。
「それに……」
レインは、いつもの明るい表情で続けた。
「魔王予報は……魔王は来ない方が一番いいんです」
町長は黙って聞いている。
「でも、来るかもしれないなら、私はこれからも伝え続けます」
その言葉を聞いて、町長は力強く頷いた。
「ユノハナタウンは、これからあなたの魔王予報を信頼します」
温泉街に、穏やかな風が吹き抜ける。
戦いの跡は、まだ街のあちこちに残っている。
それでも――。
人々の顔には、笑顔が戻り始めていた。
この日……。
ユノハナタウンの人々は初めて、魔王予報士レインという存在を、本当の意味で受け入れたのだった。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




