第36回「街に到着する」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――ユノハナタウン。
温泉の湯けむりがあちこちから立ち上り、美しい山々に囲まれた温泉街だ。
乗合馬車が、街の入口でゆっくりと停車した。
長旅を終えた馬車の車輪が止まり、車内にも静けさが戻る。
「着いたぞ」
ナイトの声を聞いて、レインは座席から立ち上がった。
そして、思いきり背伸びをする。
「ん~~っ!」
長時間座りっぱなしだった身体を伸ばすと、レインは腰に手を当てた。
「あーっ! 腰が痛い!」
「長旅だったものね」
アイリスも苦笑しながら、馬車を降りる準備を始める。
ナイトも座席から立ち上がると、凝り固まった肩をぐるぐると回した。
「俺は、とりあえず温泉に入りたいな」
アイリスが頷く。
「そうね、もう五日も入ってないもの」
その言葉を聞いたレインは、ふと自分の服の袖をつまんだ。
そして――。
くんくんと匂いを確認する。
「……あたし、クサい?」
ナイトが、少しだけ笑う。
「言ってほしいのか?」
「やっぱり聞きたくない!」
レインは慌てて袖から手を離した。
それを見て、アイリスが思わず吹き出す。
「ふふっ。クリーン魔法を毎日かけてるでしょ?」
レインが目を見開く。
「あっ! そうでした!」
ナイトが呆れたように笑った。
「見た目は旅人でも、意外と清潔に気を使うんだな」
「意外とって何よ!」
レインが抗議すると、アイリスも笑う。
三人はそんなやり取りをしながら、乗合馬車を降りた。
目の前に広がっていたのは、湯けむりに包まれた街。
――ユノハナタウン。
温泉宿。
土産物屋。
通りを歩けば、温泉まんじゅうの甘い香りまで漂ってくる。
どこか懐かしく、穏やかな空気。
長旅の疲れを忘れさせてくれるような、そんな街だった。
レインはその空気を胸いっぱいに吸い込む。
「いい街だねぇ」
「魔王さえ来なければ、最高の温泉街ね」
アイリスが周囲を見渡す。
その言葉に、三人の間にほんの少しだけ静けさが生まれた。
ここは、魔王予報で名前が世界中に知られた街。
一週間後――。
魔王が現れる可能性は、60%――。
まだ時間はある。
けれど……。
街の人々が、何も知らずに温泉を楽しんでいるわけではないことを、三人は知っていた。
ナイトは女神のカメラを肩に担ぎ直す。
「さて」
そして、いつもの調子に戻る。
「まずは宿を探すか」
「うん!」
レインは元気よく拳を握った。
「温泉入って、ご飯食べて!」
そして、胸を張る。
「それから魔王討伐、頑張るぞー!」
「順番が逆じゃない?」
アイリスが苦笑する。
「まずは休むことも大事だろ」
ナイトも笑った。
レインは二人を見て、にっこり笑う。
「じゃあ、休んでから頑張ろう!」
三人は笑い合いながら……。
ユノハナタウンの街中へと歩き出した。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




