第33回「一部の声」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
乗合馬車は、ユノハナタウンへ向けて街道を走り続けていた――。
窓の外では、広い草原がゆっくりと後ろへ流れていく。
しかし、レインはその景色を眺めながら、ぼんやりとしていた。
頭の中では、昨日の配信コメントが何度も繰り返されている。
『ムダに騒がせただけ』
『騎士団に謝れ』
『結局、来なかったじゃないか』
何度思い返しても、その言葉が胸に刺さる。
レインは小さく息を吐いた。
そんな様子を、ナイトが横目で見る。
「まぁ、魔王が来なくて良かったじゃないか」
レインは小さく頷いた。
「……うん。それはそう」
ナイトは、いつもの落ち着いた声で続けた。
「だから、あんまり気にすんなよ」
レインは少しだけ笑顔を見せる。
「うん……ありがと」
それでも、完全に気持ちが晴れたわけではなかった。
レインは魔法通信端末を開く。
画面に表示された登録者数。
そこにあった数字は――。
190人。
昨日まで250人だった。
60人ほど、登録者が減っている。
レインは何も言わず、その数字を見つめた。
アイリスは、そんなレインを見て少し怒ったような表情になる。
「みんな勝手だよね」
そして、レインに問いかける。
「魔王が降臨すれば良かったのかって言われたら、違うよね?」
レインは答えない。
アイリスの言葉を、静かに聞いている。
ナイトも頷いた。
「そうだ」
ナイトは画面を見ながら続ける。
「大半の人は理解してくれてる」
そして、レインを見る。
「こういうのは、ほんの一部の声なんだ……」
レインはゆっくりと息を吸った。
そして、長く吐き出す。
少しだけ考えた後、顔を上げた。
「……そうだね」
そして、いつもの自分を取り戻すように笑う。
「来なかったことを喜ばなきゃ」
アイリスは、ふふっと笑った。
「そうね」
それから、少し考える。
「じゃあ、お祝いに一日だけ、お食事と宿泊しようか」
レインが驚いて振り向いた。
「えっ!? 本当に?」
「今回だけね」
その言葉に、レインの顔がぱっと明るくなる。
「やったー!」
レインは両手を上げて喜ぶ。
馬車の中に、明るい笑い声が響いた。
さっきまでの重たい空気が、少しずつ消えていく。
三人は、また前を向く。
ユノハナタウンへの旅は続いている。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




