第31回「騎士団を動かす」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
乗合馬車は、ユノハナタウンへ向けて街道を走り続けていた。
馬車の中――。
レインは、魔法通信の画面をじっと見つめている。
昨日行った特別配信には、多くのコメントが寄せられていた。
そのほとんどが、サンドタウンを心配する声だった。
レインは、流れていくコメントを眺めながら小さく呟く。
「サンドタウン……心配だなぁ」
隣に座るアイリスが頷いた。
「うん。分かるよ」
ナイトも画面へ目を向ける。
「今回は二か所同時は無理だ」
レインは、少し寂しそうに頷いた。
「……うん」
ユノハナタウンへ向かう。
それは、魔王予報士として自分たちができることをするための旅だった。
けれど、その間にもサンドタウンで何か起きる可能性はある。
どうしても、気になってしまう。
その時だった――。
ピコン!
新しいコメントが表示された。
『サンドタウンに王国騎士団が向かうそうですよ!』
レインの目が大きくなる。
「えっ?」
続けて、コメントが次々と流れていく。
『本当!?』
『良かった!』
『もう出発したらしいよ!』
『明日の朝には到着予定だって!』
レインは思わず立ち上がった。
「おお! 凄い!」
馬車の中にいた他の乗客が、何事かと振り返る。
ナイトもレインを見る。
「どうした?」
レインは嬉しそうに画面を指差した。
「うん! 王国騎士団が対応するみたい!」
アイリスも画面を覗き込み、嬉しそうに微笑んだ。
「へぇー!」
そして、レインを見る。
「レインが動かしたんだね」
「え?」
レインが目を丸くする。
アイリスは優しく笑った。
「レインの配信を見て、動いてくれたんでしょ?」
「そう……なのかな?」
レインは少し照れくさそうに笑った。
自分たちは、ただ予報を伝えただけ。
サンドタウンへ行くこともできない。
魔王が本当に現れるのかどうかも分からない。
それでも。
伝えた情報を受け取った誰かが動いた。
そして、その動きがさらに王国へ伝わった。
ナイトは、そんなレインたちを見ながら静かに手を伸ばした。
空間が淡く輝く。
そこから、女神のカメラが現れた。
「せっかくだ」
ナイトはカメラを構える。
「配信するか」
レインはすぐに頷いた。
「うん!」
魔法通信が起動する。
世界へと繋がっていく。
「皆さん、こんにちは!」
レインがカメラへ向かって笑顔を見せる。
「王国騎士団さんが動いたって、本当ですか?」
すぐにコメント欄が流れ始めた。
『本当だよー!』
『明日の朝には到着予定らしい!』
『もう街道を進んでるって!』
『サンドタウンは騎士団が守ってくれる!』
そして――。
『レインさんのおかげだ!』
そのコメントを見たレインは、少し驚いたような顔をする。
それから、ほっと胸を撫で下ろした。
「良かったぁ……」
その表情には、心からの安堵が浮かんでいた。
アイリスも安心したように頷く。
「これでサンドタウンの人たちも、少し安心できますね」
ナイトはカメラを構えたまま、静かに言った。
「予報は、伝えるだけじゃない」
レインとアイリスがナイトを見る。
「人を動かす力にもなるんだな」
レインは、もう一度コメント欄へ目を向けた。
その画面の端に表示されている数字。
チャンネル登録者数――250人。
まだ、決して大きな数字ではない。
世界中に知られている有名配信者というわけでもない。
それでも……。
その250人を通じて情報は広がり、その情報が人を動かした。
そしてついに――。
カルディア王国の騎士団まで動いた。
レインが始めた「魔王予報」が。
少しずつ。
ほんの少しずつ。
この世界の常識を変えていく。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




