第30回「サンドタウン町長の判断」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――サンドタウン。
この街は砂漠の玄関口として栄える。
商人や旅人が行き交い、砂漠へ向かう者たちにとって重要な拠点でもある。
そんなサンドタウンは、その日の朝から一つの話題で持ちきりになっていた。
「見たか?」
「魔王予報だってよ」
「しかも、うちの街らしいぞ」
街のあちこちで、人々が集まって話をしている。
表情には、不安が浮かんでいた。
「でも、確率30パーセントなんだろ?」
「来ない可能性の方が高いじゃないか」
「最初の魔王を当てただけかもしれないぞ」
「たまたまだろ?」
まだ誰も、レインの魔王予報を完全には信じていない。
無理もなかった。
魔王が現れるなどという話を、事前に予測する。
そんなことが本当に可能なのか。
疑う者がいるのも当然だった。
そして、中にはこんな声まであった。
「もしかしたら、魔王1号も売名行為の自作自演だったりして」
「配信者だからなぁ……」
その言葉に、周囲の人々も複雑な表情を浮かべる。
確かな証拠があるわけではない。
だからこそ、噂は簡単に広がっていく。
――サンドタウン役場。
その一室で、町長は机の上に置かれた報告書をじっと見つめていた。
そこには、魔王予報について詳しく記されている。
――降臨確率30パーセント。
町長は腕を組んだまま、しばらく考え込んでいた。
やがて、副町長が口を開く。
「王国へ連絡しますか?」
町長はゆっくりと顔を上げた。
「……まずは相談だ」
「騎士団を派遣してもらう、ということでしょうか?」
町長は難しい表情で報告書へ目を落とす。
「降臨確率は30パーセントだ」
そして――。
「つまり、外れる可能性の方が高い」
副町長も頷いた。
「ですが、街ではすでに不安が広がっています」
「そうだな……」
町長は窓の外へ目を向ける。
サンドタウンは、砂漠の玄関口。
商人や旅人が行き交う、重要な街だ。
もし避難を呼びかければ、人の流れが止まる。
商売にも、大きな影響が出るだろう。
しかも――。
「もし魔王が現れなかったら……」
町長が呟く。
「騒ぎを起こしただけだと、言われるだろうな……」
副町長が続けた。
「商人や住民から、損害について訴えられる可能性もあります」
町長は静かに息を吐いた。
「30パーセント……」
高いとは言えない。
しかし――。
「無視していい数字でもない」
部屋に沈黙が落ちた。
魔王が現れなければ、大きな混乱を招く。
だが――。
本当に魔王が現れた場合。
その時になってから対応を始めても、間に合わないかもしれない。
町長はしばらく考え続けた。
そして――。
ゆっくりと立ち上がる。
「それでも……」
町長は、まっすぐ前を見つめた。
「何もしないで、本当に魔王が来たら――」
一度、言葉を止める。
「私は町長として、その責任を負えない」
「……はい」
副町長も静かに頷いた。
町長は、机の上の報告書を手に取る。
「まずは王国と話をしよう」
そして――。
「その上で、この街として何をするべきか決める」
副町長の表情が引き締まった。
「分かりました。すぐに連絡いたします」
「頼む」
副町長は一礼すると、部屋を出ていった。
一人残った町長は、窓の外を見つめる。
いつもと変わらないサンドタウン。
商人たちが行き交い、人々が暮らしている。
その日常を守るために――。
町長は、難しい決断を迫られていた。
◇
一方、その頃――。
レインたちを乗せた乗合馬車は、そんなことなど何も知らずに、ユノハナタウンへの道を進み続けていた。
馬車の車輪が、街道を一定のリズムで回っていく。
ガタゴト。
ガタゴト。
窓の外には、広い草原が広がっていた。
遠くには小さな山々。
街道沿いには、ところどころに農地も見える。
レインは窓を少し開け、流れていく景色を眺めていた。
「いい天気だなぁ」
気持ちよさそうに伸びをする。
「こういう日に馬車で旅するのって、なんかいいよね」
アイリスも窓の外を眺める。
「そうね」
そして――。
「ユノハナタウンに着いたら、まず温泉に入りたいわね」
「でしょー!」
レインが嬉しそうに振り向く。
「絶対入ろう!」
「魔王討伐の前に?」
「もちろん!」
レインは胸を張った。
「温泉は大事だよねっ!」
「そこは否定しないけど……」
アイリスが苦笑する。
レインは再び窓の外を見る。
「温泉入ってぇ……美味しいもの食べてぇ……」
「いっぱい寝てぇ……そして魔王を倒す!」
「順番がおかしいでしょう……」
アイリスが即座に突っ込む。
「……なんで魔王が最後なの?」
二人がそんな話をしている横で――。
ナイトは黙って女神のカメラを構えていた。
馬車の中で楽しそうに話す二人。
窓の外を流れていく景色。
レインたちは、のんびりと目的地へ向かっていた。
魔王が現れるかもしれない。
そんな危険な旅のはずなのに――。
馬車の中には、今日も穏やかな時間が流れていた。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




