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魔王予報のお時間です〜午前中は魔王が暴れるでしょう。午後には討伐され絶好のスローライフ日和になるでしょう〜  作者: さば味リン
1章 起

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30/147

第29回「特別配信」

※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。

挿絵(By みてみん)


乗合馬車は、街道を走り続けていた――。

車輪が規則正しく地面を叩き、車内が小さく揺れる。


ユノハナタウンまで、あと数日……。

三人の間には、いつものような明るい会話はなかった。


先ほど判明した、もう一つの魔王予報。

ユノハナタウンとは、ほぼ反対方向にあるサンドタウン。


降臨予想は二日後。

確率は30パーセント。


三人は、それぞれ静かに考え込んでいた。


やがて、ナイトが口を開く。

「悪い情報は早く」


それは、ナイトがいつも口にしている言葉だった。

情報は、早く届ける。

特に、人々の命に関わるような悪い情報ならなおさらだ。


ナイトはレインを見る。

「配信するか?」


レインは、少し考えた。

そして、頷く。

「うん」


レインは前を向いた。

「言うだけなら、すぐだし」


「よし」

ナイトは右手を前へ差し出した。


すると、何もなかった空間が淡く輝き始める。

光が集まり、形を作っていく。


そして――。

ナイトの手元に現れたのは、女神から授かった魔導カメラ。

女神のカメラだった。


アイリスが、その様子を見て微笑む。

「便利よね、収納付きの装備……」


「ああ」

ナイトはカメラを手に取る。

「神ナリの剣も、女神の杖も同じだ」


必要な時だけ、異空間から取り出すことができる。


レインも感心したようにカメラを見る。

「女神さま、すごいよねぇ」


三人に与えられた力は、こうしたところでも役に立っていた。


ナイトはカメラを肩に担ぐ。


「よし!」

そして、いつものように静かに宣言する。

「配信開始だ!」


魔法通信が起動する。

世界へと繋がっていく。

画面が開くと、すぐにコメントが流れ始めた。


レインは、いつもの明るい表情ではなく、真剣な顔でカメラを見る。

「皆さん、こんにちは! 特別配信です!」


隣にいるアイリスも、静かに頷いた。

そして、視聴者へ向けて告げる。

「魔王予報の追加情報です」


コメント欄が、一気に動き始めた。

『また予報!?』

『何があった!?』

『配信来た!』

『新しい魔王!?』


レインは流れていくコメントを見ながら、ゆっくりと言葉を続ける。

「新たに、サンドタウン付近で魔王予報を観測しました」


画面の向こうの人々が、固唾を呑んで見守る。


「降臨予想は二日後」

そして、最も重要な情報を伝える。

「降臨確率は30パーセントです」


アイリスが続けた。

「現在、私たちはユノハナタウンへ向かっています」

「そのため、サンドタウンへ向かうことはできません」


コメント欄に、戸惑いの声が流れる。

『えっ……』

『二か所同時なの!?』

『誰が助けに行くんだ?』

『サンドタウンの人、大丈夫なの?』


レインは、それらのコメントを見つめる。

そして、落ち着いた声で話し始めた。


「確実に降臨するとは限りません」


魔王予報は、未来を決めるものではない。

だからこそ、30パーセントという数字を、30パーセントのまま伝える。


「ですが、降臨する可能性があります」


アイリスも静かに続ける。

「可能であれば、避難や備えをご検討ください」


それ以上、不安を煽るようなことは言わない。

ただ、判断するために必要な情報を届ける。


レインは画面の向こうを、真っ直ぐ見つめた。

「詳しい情報が入りましたら、すぐに配信します」


アイリスが頭を下げる。

「よろしくお願いいたします」


ナイトは、それを確認すると静かにカメラを下ろした。

「配信終了だ」


魔法通信が切れる。


画面が消え、車内に静けさが戻った……。

三人を乗せた馬車は、何事もなかったかのように街道を進んでいく。


目指す場所は、ユノハナタウン……。


しかし――。

その頃、サンドタウンでは、先ほどの特別配信が人々の間に広がり始めていた。


「魔王が……来るかもしれない?」

「二日後って言ってたぞ」

「30パーセントらしい」

「でも、30パーセントなら……」


街のあちこちで、そんな声が聞こえ始める。

まだ、何も起きてはいない。


それでも……。

一つの予報が、人々の行動を変え始めていた。

読んでくれてありがとうございます!

この作品は不定期で投稿してます。


※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。

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