第28回「もうひとつの魔王予報」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
乗合馬車は、街道をゆっくりと進んでいた。
目的地は、温泉街――ユノハナタウン。
朝の配信で魔王予報を伝えたばかりのレインたちは、そのまま現地へ向かっている。
――馬車の中。
レインは窓の外を眺めていた。
流れていく草原。
遠くに見える山々。
穏やかな旅の景色だった。
そのとき……。
「……あっ!」
レインが突然、声を上げた。
ナイトが振り向く。
「どうした?」
先ほどまでの穏やかな表情が消え、真剣な顔になっている。
そして、ぽつりと呟いた。
「もうひとつ……」
レインは胸元に手を当てる。
「もうひとつ魔王予報が来た……!」
「えぇっ!?」
アイリスが驚きの声を上げる。
ナイトも目を見開いた。
「同時にか……」
レインはゆっくりと頷いた。
魔王の気配――。
先ほど感じたものとは、明らかに別のものだった。
「場所は?」
ナイトの問いに、レインは地図を広げる。
指先を動かし、現在地から遠く離れた場所を指差した。
「この辺り……」
そして、その街の名前を口にする。
「サンドタウン……」
アイリスが地図を覗き込む。
その場所を確認した瞬間、目を丸くした。
「真逆の方向じゃない!」
ユノハナタウンとは、ほぼ反対側。
今から向きを変えれば、どちらの街にも十分な時間をかけて到着することは難しい。
ナイトは腕を組む。
「降臨確率は?」
レインは目を閉じた。
周囲の音が遠のいていく。
魔王の気配を探るため、意識を集中させる。
馬車の揺れだけが、静かに伝わってくる。
しばらくして――。
レインがゆっくりと目を開いた。
「……二日後」
そして、もう一つの数字を伝える。
「降臨確率、30%」
馬車の中が静まり返った。
「30%……」
アイリスが小さく呟く。
ナイトも地図を見つめた。
「低いが、ゼロじゃない」
レインは複雑そうな表情を浮かべる。
「ユノハナタウンは60%……」
「でも、サンドタウンも30%……」
どちらも魔王が現れる可能性がある。
しかも、二つの街は遠く離れている。
レインたちが直接向かえるのは、一か所だけ。
アイリスは地図を見つめながら、静かに口を開いた。
「どちらも対応するのはムリね……」
ナイトも頷いた。
「俺たちは一か所にしか行けない」
女神のカメラを手に、ナイトは静かに続ける。
「だからこそ、世界へ知らせる意味がある」
レインは地図を見つめたまま、小さく息を吐いた。
「こんな時、どうしたらいいんだろう……」
馬車は止まらない……。
車輪が街道を刻み、三人をユノハナタウンへ運んでいく。
その先に待っているのは、60%の魔王予報。
そして――。
遠く離れたサンドタウンには、30%の魔王予報。
二つの魔王予報がある……
しかし、どちらか一方しか選べない……
それはレインにとって、初めての経験だった。
魔王を予報する。
それだけなら簡単だった。
しかし――。
予報した先にある人々の命と、その判断まで背負うとなれば話は違う。
この瞬間――。
レインは初めて、「魔王予報士としての責任」というものを強く意識し始めていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




