第22回「視聴者プレゼント」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
翌朝――。
乗合馬車は街道をゆっくりと走っていた。
窓の外には、どこまでも続く青空が広がっている。
昨日まで魔王と戦っていたとは思えない、穏やかな朝だった。
レインは女神のカメラへ向かって、いつもの笑顔を見せる。
「配信、開始!」
ナイトの声とともに、魔法通信が繋がった。
「皆さん、おはようございます!」
レインが元気よく挨拶する。
続いて、アイリスも笑顔で頭を下げた。
「おはようございます! 今日の天気予報のお時間です!」
いつもの朝が始まった。
レインは地図を広げながら、今日の天気を伝えていく。
「本日の天気です!」
指で地図を示しながら、明るい声で続ける。
「全国的によく晴れるでしょう!」
アイリスも画面の向こうへ呼びかける。
「お出かけ日和ですね!」
ただし、とレインは少し表情を引き締めた。
「山道では急な天候の変化に注意してください!」
「安全第一でお願いします!」
こうして、いつもの天気予報は無事に終了した。
そして――。
レインは、にっこりと笑う。
「ここからはフリートークタイム!」
アイリスが昨日のことを思い出す。
「昨日は、あのまま野宿でしたからね」
「うん!」
レインも頷く。
「野宿だったねぇ!」
アイリス、
「いや、テントはありましたけどね」
「……あっ、そうだった!」
レインが目を丸くする。
ナイトがすかさず補足した。
「立派なキャンプだったぞ」
三人は顔を見合わせて笑った。
レインは窓の外へ目を向ける。
「ちょうど今、帰宅途中なんですね!」
「なので今日は、まさかの馬車の中から配信です!」
すると、コメント欄にさっそく反応が集まった。
『馬車から!?』
『旅番組みたい!』
『景色きれい!』
レインは楽しそうにコメントを眺めていた。
その時だった……。
視聴者数の画面を見たレインの目が、大きく見開かれる。
「あっ!」
アイリスが振り向く。
「どうしました?」
レインは画面を指差した。
「登録者、増えてる!」
アイリスも画面を確認する。
「本当ですね!」
レインは数字を何度も見直した。
そして――。
「100人超えたー!」
思わず両手を上げる。
「嬉しいなぁ!」
コメント欄も一気に盛り上がった。
『おめでとう!』
『登録しました!』
『これからも応援します!』
アイリスは嬉しそうに微笑む。
「ありがたいですね」
レインはしばらく画面を眺めていた。
そして、何かを思いついたように顔を上げる。
「よーし!」
拳を握る。
「100人突破記念!」
レインは勢いよく宣言した。
「プレゼント企画やりまーす!」
アイリスがきょとんとする。
「うん?」
そして、少し困った顔になった。
「私たち、お金ないですけど?」
「お金じゃないよぉー!」
レインは笑いながら、バッグへ手を入れた。
そして取り出したのは――。
昨日、魔王1号を討伐した時に手に入れた、紫色の魔石だった。
朝日を浴びた魔石が、美しく輝く。
「プレゼントはコレっ!」
コメント欄が一瞬で埋め尽くされた。
『昨日の魔石!?』
『本物!?』
『すごい!』
レインは魔石をカメラへ見せる。
「昨日、魔王1号を討伐した時に手に入れた魔石です!」
そして、にっこりと笑った。
「登録して、コメントをくれた人の中から、お一人にプレゼントしまーす!」
「おお!」
アイリスが驚く。
「太っ腹ですね!」
ナイトも魔石を見ながら呟いた。
「当たった人は驚くだろうな」
その言葉を聞いたかのように、コメント欄が一気に盛り上がった。
『応募します!』
『欲しい!』
『絶対応募!』
『家宝にする!』
レインは満足そうに頷いた。
「皆さん!」
カメラへ向かって、改めて呼びかける。
「これからも天気予報と魔王予報、頑張ります!」
アイリスも笑顔で続ける。
「応援よろしくお願いします!」
レインは元気よく手を振った。
「では!」
そして、いつもの言葉を口にする。
「またお会いしましょう!」
「また次回です!」
ナイトが魔導カメラを操作する。
「配信終了」
魔法通信が静かに切れた。
画面が消える。
レインは手の中に残った魔王1号の魔石を見つめる。
その紫色の輝きは、朝日を受けてますます美しく見えた。
乗合馬車は何事もなかったかのように、朝日を浴びながら街へ向かって走り続けていた。
その一方で――。
世界中では、また一つ。
「魔王予報士」の名前が広がり始めていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。




