第21回「世界の反応」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
翌朝――。
北東の森……。
レインたちはキャンプを片付け、街へ戻るため乗合馬車へ乗り込んでいた。
昨夜まで焚き火を囲んでいた場所も、今ではすっかり片付いている。
空は雲ひとつない青空だった。
レインは馬車の窓から外を眺める。
「今日はいい天気だね!」
昨日、魔王との激戦があったとは思えないほどの空だった。
アイリスも窓の外へ目を向ける。
「昨日の戦いが嘘みたいね」
ナイトは座席へ身体を預けながら、静かに呟いた。
「平和なのが一番だ」
やがて馬車が動き始める。
蹄の音を響かせながら、乗合馬車はゆっくりと街へ向かって走っていった。
◇
その頃――。
世界各地では、昨日の魔王討伐配信が大きな話題になっていた。
北東の森に近い村では……。
広場に設置された魔法通信を、多くの村人たちが囲んでいる。
画面には、昨日の魔王討伐配信の記録映像が流れていた。
魔王1号が現れた場面。
そして、レインたちが戦った場面。
村人たちは食い入るように画面を見つめていた。
「見たか?」
「ああ!」
興奮した様子で、一人の村人が答える。
「魔王が本当に現れた!」
別の村人も驚いたように続けた。
「しかも、出る前から予報してたぞ!」
村人たちは顔を見合わせる。
魔王が現れる前に知らされていたからこそ、避難することができた人々もいた。
「避難できたのは、あの配信のおかげだ」
その言葉に、周囲の村人たちは静かに頷いた。
不安に満ちていた表情には、少しずつ安堵が戻っていた。
◇
とある街の冒険者ギルドでは……。
ここでも、昨日の配信映像が話題になっていた。
「昨日の配信見たか?」
「ああ、見た見た!」
冒険者たちが酒場や掲示板の前で話している。
「まさか魔王を討伐するとはな」
「しかも現地から生中継だ」
冒険者の一人が感心したように腕を組む。
「すごい時代になったもんだ」
その近くでは、受付嬢も魔法通信の映像を静かに見つめていた。
画面には、魔王1号へ立ち向かう三人の姿が映っている。
受付嬢は、しばらく言葉を失っていた。
◇
とある王都の騎士団本部では……。
一人の騎士が、記録映像を持って隊長のもとへ駆け込んできた。
「隊長!」
勢いよく魔法通信を起動する。
「魔王討伐の記録映像です!」
隊長は何も言わず、画面を見つめた。
そこには、魔王1号と対峙するレインたちが映し出されている。
そして……。
レインが雷をまとった剣を振り抜く。
「神ナリ一閃!!」
映像の中で、凄まじい雷光が走った。
魔王1号の巨体が紫色の煙となって消滅する。
隊長はしばらく黙っていた。
「……」
やがて、静かに口を開く。
「これが事実なら」
部屋にいた騎士たちが隊長を見る。
「世界は変わるぞ」
その言葉とともに、部屋に静かな緊張が走った。
◇
勇者パーティたちは……。
食堂に設置された魔法通信を、勇者たちは見上げていた。
画面には、魔王1号の出現前にレインが予報を行う場面が映っている。
勇者が首を傾げた。
「魔王を予報……?」
隣にいた賢者が、映像を分析するように見つめる。
「偶然では説明できませんね」
聖女も不思議そうな表情を浮かべる。
「この人たち、何者なんでしょう」
勇者はしばらく映像を見つめていた。
そして、ふっと微笑む。
「会ってみたいな」
仲間たちも顔を見合わせ、静かに頷いた。
◇
そして……。
レインたちの魔法通信チャンネル。
そこでは、ある数字がゆっくりと増え始めていた。
20人 → 35人 → 50人
→ 70人 → 100人。
登録者数は、その後も少しずつ増え続けている。
昨日まで、ほんの少しずつ増えていく数字を喜んでいた小さなチャンネル。
それが今――。
世界中から注目を集め始めていた。
しかし。
当の本人たちは、そのことをまだ知らない。
◇
乗合馬車では……。
レインは窓の外を眺めながら、のんびりと呟いた。
「次はどんな魔王かなぁ」
すると、すぐ隣から声が返ってくる。
「その前に朝ご飯です」
アイリスだった。
レインは振り向く。
「そうだった!」
ナイトは座席に身体を預けたまま、ぼそりと言う。
「俺はフカフカのベッドで寝たい」
レインは即座に頷いた。
「賛成!」
アイリスも笑う。
「まずはゆっくり休みましょう」
三人は顔を見合わせた。
そして――。
「ハッハッハ!」
また三人で笑った。
馬車は朝日に照らされた街道を走っていく。
その先には、いつもと変わらない街の日常が待っている。
けれど……。
世界は、すでに静かに変わり始めていた。
魔王の出現を予報した三人。
魔王を討伐した三人。
そして、その瞬間を世界へ届けた三人。
その中心にいるレインたちは――。
まだ、自分たちの身に起きている大きな変化に気づいていなかった。
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