【改稿】第19回「消滅しました」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
北東の森――。
魔王1号の巨体は、紫色の煙となってゆっくりと消えていく。
シュゥゥゥ……。
跡形もなく風に溶けていく巨体――。
そして最期に、ぽつんと残されたのは、大きな紫色の魔石だった。
コロン……。
森に静寂が戻る――。
先ほどまでの激戦が嘘のように、穏やかな空気が辺りを包み込んでいった。
レインは足元に落ちた魔石をそっと拾い上げる。
そして、手のひらに乗せた紫色の魔石をじっと見つめる。
「これが……魔王の魔石」
魔石は、内側からほんのりと温かな光を放っている。
アイリスも興味深く覗き込む。
「普通の魔物から落ちる魔石とは、雰囲気がまるで違うわね」
ナイトもすかさずカメラを向けた。
「あとでじっくり調べる必要がありそうだな」
「あはー! 家が買えるくらいの高価な魔石ならいいなぁ」
レインは査定額に期待しながらも、魔王の魔石を大切にバッグへとしまった。
そして、カメラに向かってとびきりの笑顔を咲かせる。
――まだ、配信は終わっていない。
レインは画面の向こうの視聴者へ呼びかける。
「皆さん!」
静けさを取り戻した森を見渡しながら、澄んだ明るい声を響かせた。
「危険は去りました! もう安心してください!」
その言葉に反応し、コメント欄が再び怒涛の勢いで流れ出す。
『これで避難しなくていいんだ!』
『レインちゃん本当にありがとう!!』
『助かったぁぁぁ!』
『神配信すぎる、速攻で登録した!』
『次の配信も絶対見に来ます!』
流れるコメントを見つめていたレインが、ふと何かに気づいて目を丸くする。
「え……ちょっと待って!」
慌てて手元の視聴者画面を確認。
「登録者数……十二人だったのに……百人!?」
信じられない思いでもう一度数字を凝視する。
「増えてるー!?」
「本当だ……! 一気に伸びてるわ!」
アイリスも隣から画面を覗き込み、驚きと喜びの声を上げる。
ふたりの興奮した様子に、ナイトは女神のカメラを構えたまま、満足そうに口元を緩めた。
「きっちり結果を出したからな」
レインは嬉しさに胸を躍らせる。
「よーし! あたしたちも、次のステージへっ!」
その表情には、激闘の疲れなど微塵もなく、達成感と喜びが満ちあふれていた。
そして――カメラのレンズを真っ直ぐに見つめ、凛とした笑顔で宣言する。
「これからも、皆さんに安全と笑顔を届けます!」
ナイトが手元の女神のカメラを操作する。
「よし、配信終了だ」
「ありがとうございましたー!」
レインが元気いっぱいに手を振る。
アイリスも優しく微笑み、カメラへ向かって手を添えた。
「また次回、お会いしましょう!」
――カチリ。
魔法通信が静かに切断され、画面がスッと暗転する。
ようやく、本当の意味で戦いが終わった。
見上げれば、茜色の夕日が森全体を優しく赤く染め上げている。
恐ろしい魔王の気配は、もうどこにもない。
静かな風が、木々の間を心地よく吹き抜けていった。
レインはゆっくりと空を見上げる。
そして、いつも以上に力の抜けた笑顔で二人に提案する。
「午後は、絶好のスローライフ日和だね」
その言葉に、アイリスもナイトも思わず吹き出す。
世界初の魔王討伐という偉業を成し遂げた三人は――。
日常となった湖畔のキャンプ地に戻るのだった。
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