【改稿】第18回「神ナリ一閃」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
北東の森――。
魔王1号は大きく身体を震わせ、大きな咆哮を上げた。
グワァァァーッ!
次の瞬間、魔王1号が右腕を大きく振り上げる。
ゴォォォォッ!!
腕の周囲に燃え盛る炎が渦を巻く。
「おい! ウソだろっ!」
ナイトの叫びを置き去りに、巨大な炎の塊が一直線に放たれる!
「ナイト! もう少し頑張って!」
レインは思わず叫んだ。
目前まで迫る猛火――。
「これは、頑張ってどうこうの話では……」
どうしていいか分からない――その時だった!
アイリスが杖を掲げる。
「ウォーターボール!」
杖の先から放たれた巨大な水球が、一直線に飛んでいく!
ドォン!!
炎と水が正面から激突!
ジュワァァァッ!!
大量の水蒸気が一気に立ち込め、森の景色を真っ白に染め上げた。
ナイトはその光景の只中で、女神のカメラを構え続けている。
「いいぞ!」
素早く手元の画面を確認。
「バッチリな画角だっ!」
「そこ!?」
アイリスが思わず突っ込んだ。
ナイトはどこまでも真剣な表情だ。
「最高の映像を届けるのが、配信者の仕事だからな!」
死線の中でも、撮影者としてのこだわりだけは一切ぶれない。
配信画面には、視聴者からのコメントが次々と流れていく。
『カメラマンさん余裕ある!?』
『いや死んでたぞ絶対!』
『ウォーターボールなかったら詰んでただろ!』
『さすがアイリスさま!』
『魔王の炎を完封したぁ!』
『ナイス連携!』
『頑張れー!』
『いけるぞ、反撃だ!!』
その間も――。
レインは魔王1号から一瞬たりとも目を離さず、静かに神ナリの剣へ魔力を注ぎ続けていた。
青白い雷が刀身を包み込む。
バチバチバチッ!
雷光は刻一刻と激しさを増していく。
やがて――、レインがすっと目を開いた。
「……あっ!」
その声に、ナイトとアイリスがバッと振り向く。
「ナイト! アイリス! 準備できた!」
レインは二人へ声を張る。
「分かった! 後は頼むっ!」
ナイトは素早く立ち位置を変え、カメラをレインへと向ける。
アイリスも杖を構え直し、最後の支援魔法を解き放つ。
「身体強化!」
柔らかな光が、レインの身体を包み込む。
「気を付けてよ!」
アイリスが叫ぶ。
レインは大きく頷くと、荒ぶる雷を纏った剣を上段に構える。
「よし! チャージ完了!」
全身に圧倒的な力が満ちていく。
レインは真っ直ぐに魔王1号を見据えた。
「行くよっ!」
その声に呼応するように、魔王1号が再び吠える!
グワァァァーッ!
魔王1号が地響きを立てて踏み込む。
同時に、レインも一気に地面を蹴った!
ダンッ!!
弾けるように前へ飛び出す。
まるで一筋の雷のような速度で、魔王1号との距離を瞬時に詰めていく。
配信画面には、その躍動する姿が鮮明に映し出されていた。
『速いっ!!』
『行けぇぇぇ!!』
『光の速さでダッシュしてるんだが!?』
『人間が出していい速度じゃない!!』
『雷の残像残っててヤバい!!』
『追えてるカメラマン何者だよ』
雷光のような速度で、レインは魔王1号の目の前へと躍り出る――。
そして――、一瞬、世界から音が消えた。
風の音も。
巨大な魔王1号も。
画面越しに息を呑む視聴者たちも。
すべてが、その一瞬に引き込まれていく。
レインの名乗りが、静寂を突き破った。
「魔王予報士――レイン!!」
刀身へ、眩いばかりの雷光が集束していく!
次の瞬間――。
「神ナリ一閃ッ!!」
ズバァァァァッ!!
神の雷を宿した必殺の一閃が、魔王1号の巨体を真っ二つに切り裂いた!
グ……ワァ……
魔王1号が苦しげな咆哮を上げる。
その巨体はゆっくりと傾き、やがて崩れていく。
魔王1号の身体は、紫色の煙へと変化していく――。
シュゥゥゥ……。
巨大な身体が、嘘のように煙となって風に消えていく。
そして、最後に――。
コロン……。
地面へと、大きな紫色の魔石がひとつ、転がり落ちた。
森に、静寂が戻る――。
レインは深く息を吐きながら、ゆっくりと剣を鞘へと納めた。
そして、カメラへ向かってとびきりの笑顔を咲かせる。
「皆さん!」
レインは胸を張って、ブイサインを見せる。
「魔王1号――消滅しましたっ!」
直後――!
配信画面が歓喜のコメントで埋め尽くされる!
『うおおおお勝ったあぁぁぁ!!』
『マジで倒したァァァ!!』
『一瞬で切り裂いた……!?』
『威力が実におかしい!!』
『神回決定!』
『魔王予報、本物だった!』
『また絶対見に来ます!!』
『伝説の配信になっちまったな……』
怒涛のコメントを見つめ、レインは気恥ずかしそうに鼻を擦る。
「……えへへ」
アイリスも緊張の糸が切れたように、ほっと胸をなでおろした。
「本当に……終わったのね」
レインは静けさを取り戻した森を見渡す。
先ほどまで暴れていた魔王の姿は、もうどこにもない。
ただ――大きな紫色の魔石だけが、ポツンと地面に残されていた。
木々の間を、心地よい風が通り抜けていく。
レインは小さく息を吐いた。
「……終わったぁ」
ナイトはカメラを二人に向け、静かに頷く。
「初めての魔王討伐。大成功だな」
レインとアイリスは顔を見合わせる。
そして――二人同時に、吹き出すように笑い合った。
こうして――。
世界で初めての魔王討伐は、静かな森の中で見事に幕を閉じたのだった。
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