【改稿】第16回「魔王1号」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
北東の森――。
レインたちはテントの前でのんびりと過ごしていた。
森は静かだ。
風が木々を揺らし、鳥の鳴き声が聞こえる。
レインは焚き火の向こうを眺めながら、ぽつりとつぶやいた。
「今日も何もないねぇ」
「魔王が来ないほうが嬉しいわ」
アイリスはコーヒーを飲みながら、正直な気持ちを言う。
「まぁ、それはあたしも同意見だけどさっ!」
一方、ナイトは――。
女神のカメラで、木の枝で鳴いている小鳥を撮影していた。
ピピピピピ、チチチチチ。
ピチクリ、ピチクリ。
奇妙な鳥の鳴き声が、森の中に響いている。
レインがほっこりとした表情でナイトを見つめる。
「あれってバードウォッチングやってる?」
「環境ビデオでも撮ってるのかしら……需要はありそうだわね」
アイリスもイタズラっぽく笑う。
その時だった――。
鳥たちが一斉に飛び立つ。
バサバサバサッ!
レインもまた、何かを感じ取ったようだ。
「あぁ……!」
「レイン?」
アイリスがすかさず声をかける。
レインは少し青い顔をしながら、湖畔の周囲をじっと見回す。
「なんか……来る」
そして、確信したように顔を上げた。
「……来る!」
次の瞬間――、地面がゆっくりと揺れ始めた。
ゴゴゴゴゴ……。
テントが揺れ、焚き火の炎が大きく揺らめく。
「地震……?」
アイリスが身構える。
だが、ナイトは首を横に振る。
「いや、これは違う……あれを見ろ!」
ナイトが指さす先――。
三人から少し離れた森の中で、紫色の魔力が立ち上っていた。
空気が重く沈み込む。
ドォォォン!!
少し離れた場所に、巨大な影が姿を現した――。
異様な魔力を身体に纏った、禍々しい姿。
人ではなく、ただの魔物とも違う。
おそらく、これが――魔王。
この世界に、初めての魔王が降臨した――。
◇
そこにいるだけで、周囲の空気そのものを変えてしまうほどの存在感。
ナイトは女神のカメラを握る手に力が入る。
「魔王予報……的中だ」
「……」
「……」
レインもアイリスも、しばらく言葉を失っている。
魔王が来るかもしれないと待機はしていたものの、実際に目の当たりにすると、恐怖で身体が動かない。
ナイトがすぐに女神のカメラを構える。
「緊急配信だ!」
そして、レインとアイリスに喝を入れる。
「世界で初めて、魔王予報が的中した瞬間だ! 俺達はこれを仕事にしていくんだろ? しっかりしろっ!」
ナイトの言葉に、レインは我に返った。
「そうだった!」
女神のカメラが魔法通信に接続される。
そして、配信開始――!
レインは焦った声でタイトルを叫ぶ。
「皆さん! 魔王予報のお時間です!」
突然始まった現地配信。
視聴者数は――まだ3人。
コメント欄にも戸惑いが広がる。
『え? 魔王予報?』
『なんか始まった』
『現地?』
レインはカメラへ向かって話し始める。
「今! 魔王予報をした現場にいますっ!」
その声には、いつも以上の緊張感が宿っていた。
「目の前に……魔王が降臨しました」
アイリスも補足情報を伝える。
「少し離れた、森の中にいますわっ!」
コメント欄が急速に流れ始める。
『え? ネタ企画じゃないんだ?』
『本当だったの?』
『湖がキレイ、どこ?ここ?』
ナイトは女神のカメラで、少し離れた魔王の姿をズームで撮影する。
画面に映る、魔王らしき姿に、コメント欄が沸く。
『うわぁぁぁ!!』
『ほんとになんかいるじゃん!』
『レインさんの魔王予報が当たったってこと?』
『魔物ではなくて? 魔物にしたらデカすぎだわな』
コメント欄が沸いてる一方――。
レインたち三人には、緊張感が漂っていた。
魔王が目の前に降臨した――。
魔王を探しに森の中へ入る必要はなかった。
まるで、向こうからレインたちのところへやって来たかのようだった。
そして――、魔王が三人に気づく。
ズシン……ズシン……。
ゆっくりと近づいてくる魔王。
「……来た」
レインが息を呑んだ。
近づくにつれて、その特徴的な姿がはっきりと見えてくる。
大きさは三メートルほど。
黒い身体に鮮やかな紫の紋様。
太く長い腕に、鋭く伸びたツメ。
そして、赤く光る二つの目。
身体の周囲には、紫の魔力が霧のように漂っていた。
それだけで――普通の魔物とは明らかに違う存在だと分かる。
レインは一度、深く息を吸った。
そして――カメラ目線で語り始める。
「あれが――あたしが予報した魔王です!」
レインは、森の奥に立つ魔王を指差した。
そして、堂々と宣言する。
「魔王1号です!」
アイリスは女神の杖を強く握りしめた。
「本当に……現れた」
ナイトは表情は静かに、心は昂ぶりながら撮影する。
レンズの向こうに映る――この世界に初めてに降臨した魔王。
その姿を世界中へ届けるために――。
コメント欄が一気に動き始めた。
『本当に魔王だ……』
『逃げて!』
『こんなの初めて見た!』
『魔王予報、本物だった!』
レインは神ナリの剣へ手を伸ばす。
そして、ゆっくりと鞘から抜く。
その刀身に、淡い雷光が宿った。
レインはカメラに向かって告げる。
「皆さん……ここからは――」
そして、神ナリの剣の剣先を魔王へ向ける。
「魔王討伐を開始します!」
ナイトもカメラを構え直す。
「魔王との戦闘を、世界に届ける!」
アイリスも杖を構える。
「全力でサポートするわ」
三人の準備が整った――。
穏やかだった森は、戦場へと変わっていた。
魔王がゆっくりと動き出し、紫色の魔力が周囲へ広がっていく。
世界初の魔王予報。
そして――。
世界初の魔王との戦闘が始まる。
読んでくれてありがとうございます!
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