【改稿】第14回「真夜中のレトルトカレー」
静まり返った深夜――。
パチパチと焚き火が爆ぜる音だけが響く湖畔で、ナイトは真夜中の見張りを担当していた。
しかし……ナイトの脳裏には夕食の光景が離れない。
(……くっ、思い出すだけで腹が減ってくる……)
レインのあの満足そうな顔。そして鼻腔に焼き付いて離れないカレーの香り。
葛藤の末、ついに我慢の限界を迎えたナイトは、道具袋からそっとメスティンを取り出した。
「今なら二人は寝てる……バレないはずだ」
手際よく米を炊き上げ、お湯を沸かす。
そして、禁断のアイテム『レトルトカレー』を温めた。
ホカホカに炊き上がった白飯の上に、濃厚で温かいカレールウを一気にかけると――
夜の静寂の中に、あまりにも芳醇で、あまりにも暴力的なスパイスの香りが解き放たれる。
ナイトがスプーンを手に取り、まさに一口目を口へ運ぼうとしたその瞬間――。
バッと勢いよくテントの幕が開いた。
「……カレー食べてるの、バレバレなんだよっ!!」
スプーンを口元で止めたまま固まるナイトに、レインがジト目で詰め寄る。
「まさか、夕食をパンで済ませたのは、真夜中にカレー食べるつもりだったの?」
アイリスもテントから顔を出し、呆れ半分、うらやましさ半分といった表情で言葉を重ねた。
「そうよナイト……一人で食べるなんてズルいじゃない?」
ナイトはゆっくりとスプーンを下ろすと、深々とため息をつく。
「……お前ら、起きるのが早すぎるだろう……」
「あんなカレーの匂いがテントに入ってきたら、死んでたって起きるでしょっ!」
レインの魂の叫びに、ナイトは観念する。
ナイトは道具袋から予備のスプーンを二本取り出す。
「悪かった……みんなで食べよう」
結局、真夜中の暗闇の中、それぞれのお皿にカレーが三等分される。
「外で食べる、真夜中のカレーは神がかってウマ―い!」
「……ええ、お行儀は良くないかもだけれど、これは……抗えないわね」
「……ふっ、カレーもまた、恐ろしい食料だな」
三人のお腹を満たすスパイスの香りと小さな笑い声――。
夜の森中に静かに溶けていくのだった。




