第134回「黄金色の稲穂」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
蝗害の魔王を討伐してから、数週間が過ぎた。
レインの心には、ずっとコメライス村の田んぼが残っていた。
あの時――。
自分の力で傷つけてしまった、青田。
レインは、あの光景を忘れられなかった。
そんなある日――。
レインたちは、いつものようにホミラタウンで天気情報を配信していた。そして、魔法配信端末に、一通のメッセージが届く。
「……あれ?」
レインが画面を見る。
アイリスも隣から覗き込んだ。
「コメライス村からですね」
ナイトが尋ねる。
「何かあったのか?」
レインは、急いでメッセージを開いた。
そこには、コシヒコからの文章が記されていた。
『ぜひ、もう一度コメライス村へ来てください』
『急きょ、取材をお願いしたいことがあります』
レインは、しばらく画面を見つめていた。
「……」
そして――。
レイン、アイリス、ナイトは顔を見合わせる。
レインが立ち上がった。
「行こう!」
その日のうちに。
三人はコメライス村へ向かった。
◇
コメライス村――。
村へ到着したレインたちは、目の前に広がる景色を見て立ち止まった。
「……えっ?」
そこに広がっていたのは――。
数週間前とは、まるで違う景色。
黄金色の田んぼだった。
あの時――。
茶色く変色していた稲。
黒く焦げてしまった葉。
力なく垂れ下がっていた稲穂。
それが今は――。
まっすぐ空へ向かって立ち上がっている。
穂には、大粒の米がぎっしりと実っていた。
アイリスが、信じられないものを見るように目を見開く。
「こんなことって……」
ナイトも、田んぼを見つめたまま呟いた。
「信じられない……」
レインは、何も言わずに田んぼへ駆け寄った。
そして――。
稲穂をそっと手に取る。
「……」
指先に伝わる、稲の感触。
確かに、生きている。
黄金色に輝く稲穂を見つめながら――。
レインが、小さく呟いた。
「生き返った……」
もう一度――。
今度は、はっきりと。
「稲が、生き返ったんだ!」
風が吹く――。
黄金色の稲穂が、一斉に揺れる。
サワサワ……。
その光景を見つめながら――。
レインの表情に、少しずつ笑顔が戻っていった。
「……よかった」
小さな声だった。
けれど――。
その笑顔は、数週間前にはなかったものだった。
レインは、黄金色の田んぼを見つめる。
傷ついてしまったと思っていた稲が。
それでも生きることを諦めず――。
今日まで育っていた。
そして――。
黄金色の稲穂は、まるでレインにこう伝えているようだった。
まだ、終わってないよ――と。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




