第132回「討伐の代償」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
レインは蝗害の魔王を倒した――。
魔法通信の画面には、討伐を見届けた視聴者たちから、次々とコメントが流れている。
『すげー!』
『どういう理屈なの?』
『水で神ナリ一閃が伝播した?』
『神ナリ一閃が最強!』
『またレインが魔王を倒したぞ!』
『コメライス村、助かった!』
レインの討伐を絶賛するコメントが、画面を埋め尽くしていく。
しかし――。
レインの顔色は、良くなかった。
視線の先にあるもの。
それは――。
コメライス村の青田だった。
神ナリ一閃の電撃を帯びた衝撃が、雨で水の張った田んぼを駆け抜けた。
その結果――。
黒く焦げる稲。
茶色く変色する葉。
力なく垂れ下がる稲穂。
青々としていたはずの田んぼには、痛々しい跡が残っていた。
「……」
レインは、田んぼを見つめる。
その光景を、村人たちも見つめていた。
誰も責める言葉を口にしない。
それでも――。
その表情は、静かに曇っていた。
コシヒコは、青葉をそっと手に取る。
「……」
葉先は茶色く変色していた。
コシヒコは何も言わず、小さく息をつく。
レインは、神ナリの剣を握ったまま立ち尽くしていた。
「……」
先ほどまでの歓声が、遠くに聞こえる。
『すごかった!』
『レインさん最高!』
そんなコメントとは裏腹に――。
レインの目の前には、傷ついた田んぼが広がっていた。
しばらくして――。
レインは、ゆっくりと頭を下げる。
「ごめんなさい……」
小さな声だった。
誰も答えない。
責める者はいない。
けれど――。
慰める言葉も、すぐには出てこなかった。
ただ、風が吹く。
傷ついた田んぼの稲が、風に揺れている。
サワサワ……。
その音は、どこか寂しそうだった。
レインは顔を上げることができない。
討伐には成功した。
村は守られた。
人々も無事だった。
それは、間違いなく大きな勝利だった。
けれど――。
守りたかった青田は、傷ついてしまった。
魔王を倒すために使った力が。
結果として――、
守ろうとしていた田んぼを傷つけた。
その事実が――。
レインの胸に深く突き刺さった。
そして、この日の勝利は。
レインの心に、小さくない傷跡を残した。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




