第129回「満腹な勇者」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
防衛戦が始まってから――。
一時間を越えていた。
村人たちは、それぞれの持ち場で戦い続けている。
風魔法で押し返す。
火魔法で追い払う。
水魔法で田んぼを守る。
そして、レインもアミを振り続けていた。
しかし――。
時間が経つにつれて、村人たちの動きにも少しずつ疲労が見え始めていた。
ナイトが周囲を見渡す。
「厳しいかっ!」
黒いバッタの数は、依然として多い。
いくら追い払っても、次から次へと田んぼへ入り込んでくる。
コシヒコも歯を食いしばった。
「くそっ……!」
そして――。
もう一つ、変化が起きていた。
田んぼの中を駆け回っていたマカモたち。
その動きが、少しずつ鈍くなっていく。
「クワッ……」
一匹……また一匹……。
マカモたちが、黒いバッタを食べるのをやめていく。
そして――。
マカモたちは、ぞろぞろと田んぼから出ていく。
向かう先は自分たちの巣箱だった。
その光景を見ていた視聴者から、次々とコメントが流れる。
『あぁー! マカモさまぁー!』
『お戻りください!』
『もう食えないよな、分かるよ』
『満腹か……』
レインも、巣箱へ戻っていくマカモたちを見つめる。
「マカモちゃんたちも、いっぱい食べたもんね」
ナイトも頷いた。
「さすがに限界か」
コシヒコも苦笑する。
「仕方ないな」
マカモたちは、今日だけで大量のバッタを食べた。これ以上は無理なのだろう。
戦況は、少しずつ悪くなっていた。
村人たちも疲れている。
マカモも満腹。
それでも――。
蝗害の魔王は、まだ止まらない。
黒い群れが、じりじりと田んぼへ近づいてくる。
そして――。
青田へ入り込むバッタの数が、少しずつ増えていく。
レインは黙って戦場を見渡した。
「このままじゃ、勝てない……」
風魔法……火魔法……水魔法……。
アミ……マカモ……。
これまで使ってきたものを、頭の中で整理する。
「他に何かないかな……」
そして――。
ピンッ!
レインの表情が変わった。
「あ!」
コシヒコが振り返る。
「どうした!」
レインの目が、少しずつ輝いていく。
「コシヒコさん、もしかしたら……」
レインは空を見上げる。
「勝てるかもしれません……」
コシヒコが目を見開いた。
「なんだと?」
レインは、もう一度頷き、はっきりと言った。
「まだ、方法はあります」
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




