【改稿】第12回「湖畔のキャンプ」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
木々をかき分け、森の奥へと少し進んだところで――。
ふっと視界が開け、静かな水面をたたえる小さな湖が姿を現します。
「ここ! いいんじゃないのー?」
レインの一言で、設営場所が決まりました。
湖畔でのキャンプです――。
三人は、さっそくキャンプの準備を始めます。
「アイリス、そっち持てるー?」
「ええ、大丈夫よ。せーの……で立ち上げるわね」
二人で息を合わせてポールを押し込むと、綺麗にドーム型のテントが立ち上がりました。
「よーし、組み立て完成!」
レインは仕上げとばかりにハンマーとペグを手に取ります。
風で飛ばされないよう、ペグを地面にあてがってハンマーをグッと振り下ろしました。
カン! カン!
澄んだ金属音が湖畔に心地よく響きます。
「はっはー! 順調、順調!」
レインの楽しそうな声が響きます。
その間に、アイリスはナイトの元へと向かいます――。
ナイトは周囲から集めてきた乾いた薪を、ちょうど組み終えたばかりでした。
「ふふっ、あとは火を付けるだけ?」
「そうだな、頼む!」
アイリスは女神の杖を手に持ち、魔力を杖に蓄えます。
「ファイヤーボール!」
ぽっ!
女神の杖から火の玉が飛び出します。
焚き火の種火用――直径2センチ程度の、かわいらしい火の玉です。
小さな火の玉が薪に燃え移り、静かなパチパチという音とともに暖かな火が灯りました。
「ふっ、見事なもんだな」
「女神さまの杖、凄く使いやすいのよね」
そこにペグ打ちを終えたレインがやってきます。
「あ! もう火がついてるっ!」
嬉しそうに火に当たるレインです。
「あったけー!」
ナイトは道具袋から調理器具を取り出します。
「コーヒーでも飲むか?」
「あ! 飲むー!」
そういって、ナイトは水筒を取り出し、コッヘルに水を入れます。
そして魔道具バーナーの火に掛けました。
ナイトの手際の良い所作を見ながら、アイリスがいいます。
「私も貰おうかしら」
「おう、もちろんだ」
バーナーの火にかけられたコッヘルの底から、小さな気泡がポコポコと出始めます。
湖畔での、穏やかなコーヒータイムが始まりました――。
◇
設営がひと段落し、焚き火の火がパチパチとはじけます。
ナイトが丁寧に淹れたコーヒーが、それぞれのマグカップに注がれます。
立ち上る芳醇な香りと温かい湯気が、夕暮れ時の少し冷えてきた空気に溶けていきました。
「ふはぁ~……沁みる~……!」
両手でカップを包み込み、一口飲んだレインが幸せそうに吐息をつきます。
「ふふ、本当ね。外で飲むコーヒーって、どうしてこんなに美味しく感じるのかしら」
「外で食べると三割増しというからな」
「きっと、空気がおいしいからだよっ!」
レインは樹木の香りがする空気を堪能しながら、コーヒーを一口飲みます。
そして、改めて周りの景色に目を向けます。
「それにしても、綺麗なところだねぇ……」
「そうね。森の少し奥に入っただけで、こんな素敵な湖があるなんて知らなかったわ」
「ああ。水辺のおかげで片側の警戒も減らせる。安全で、景観もいい。最高のキャンプ地だな」
静かな水面と、焚き火がパチッと弾ける音。
三人はしばらく言葉を交わさず、温かいマグカップを手に、暮れゆく湖畔の景色をじっと眺めていました。
ぐぅ~……。
静寂を破って、誰かの腹の虫が響き渡ります。
「だれっ!」
間髪入れず、レインが大きな声で叫びます。
「レインだろ?」
「やっぱり!」
くだらない抵抗を見せるレインに、アイリスが呆れ顔で言います。
「なんで一回人のせいにしたの?」
レインはぐぬぬと顔を赤くすると、照れ隠しで残りのコーヒーをゴクリと飲み干します。
そして、お腹の虫の話題を強引に打ち消すように、勢いよくカップを地面に置きます。
ドンッ!
「っふはー! 美味しかった! さ、そろそろ夜ゴハンにしない!?」
あからさまな話題そらしに、アイリスは見透かしてふふっと笑います。
「分かりやすく話題を変えたわね」
「ははっ、まぁ俺も腹が減ってきたな」
ナイトは、コッヘルでお湯を沸かし始めます。
コポコポ……。
レインは道具袋からカップ麺を取り出します。
「ナイトはしょう油味だよね? アイリスはいつものシーフード?」
「おう! 俺は王道のしょう油だな」
「シーフードの方がオイシイわ」
レインは、二人にカップ麺を渡しながら言う。
「まぁでも、一番はカレー味だけどね」
カップ麺の味について……それぞれ三人の好みは分かれるようです。
そのままレインは、道具袋から四角い金属製の飯ごう――メスティンを取り出します。
そして、手際よくお米と水をセットし、固形燃料の火にかけます。
「ねえねえ、ふたりもお米食べる? 一緒に炊くよ?」
サラリと尋ねるレインに、アイリスは道具袋からパンを取り出します。
「お気持ちは嬉しいけれど、私はこのパンで十分よ。夜は軽く済ませたいし」
「俺もパンするかな。アイリス俺の分も頼む」
「じゃあ、あたしは遠慮なく二人の前でお米食べまーす!」
レインは嬉しそうに火をつけ、メスティンから湯気が上がるのを待ち始めます――。
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