第122回「守り抜いた田んぼ」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
日の出とともに始まった戦い。
それから――。
数時間が経過していた。
勇者たちも……王国騎士団も……。
すでに、かなり消耗していた。
バササササッ!
黒いバッタの群れに、動きが出た。
「……なんだ?」
アルスが空を見上げる。
無数のバッタが、一か所へ集まり始めていた。
「集まってる?」
ミネルバも、その異変を見つめる。
一匹。
また一匹。
次々と黒いバッタが集まり、重なっていく。
そして――。
バサッ!
黒い群れが、人の形へと変化した。
空中に、一体の魔王が現れる。
背中には、大きな羽。
そのシルエットは――。
巨大なバッタを思わせるものだった。
「グギャー!」
魔王23号が、大きな雄叫びを上げる。
その声が、田んぼ一帯に響き渡る。
アルスは聖剣を構えたまま、魔王を見つめる。
「……」
ミネルバが呟いた。
「怒ってる?」
カタリナも魔王の様子を観察する。
「どうやら、そのようですね」
魔王23号が見つめているもの。
それは――。
目の前に広がる青田だった。
自分が食べようとしていた田んぼ。
しかし、勇者たちに邪魔をされ、思うように食べることができない。
魔王23号にとって、それが気に入らないのだ。
「グギャー!」
再び、雄叫びを上げる。
その姿を配信で見ていた視聴者たちも、一斉に反応する。
『効いてる!』
『効いてるぞ!』
『諦めろっ!』
『田んぼは食わせないぞ!』
魔王23号が、さらに大きく叫ぶ。
「グギャー!」
そして――。
バササササッ!
魔王の身体から、無数の黒い影が飛び出した。
アルスが身構える。
「来るぞ!」
しかし――。
黒い影は、勇者たちへ向かってこなかった。
一斉に空へ飛び立っていく。
バサササササッ!
黒い群れが、空高く舞い上がる。
そして――。
スッ。
その姿が、消えた。
アルスが目を見開く。
「……なっ!? どこだっ!」
ミネルバも周囲を見回す。
「また消えたわ!」
カタリナがすぐに指示を出す。
「周囲を探します!」
勇者たちが辺りを見渡す。
空……田んぼ……村の周囲……。
しかし――。
魔王の姿は、どこにもない。
「くそっ!」
アルスが悔しそうに聖剣を握る。
ミネルバも唇を噛んだ。
「また見失った……」
黒いバッタの群れは消える……。
さっきまで激しい戦いを繰り広げた場所。
それが今……。
静かな田んぼだけが残っていた。
◇
カメラスの配信が終わった――。
魔法通信の画面が消える。
レインが、ぽつりと呟く。
「田んぼは守りきった……」
アイリスも頷いた。
「凄いわね!」
今日一日――。
勇者たちも、騎士たちも、必死に戦った。
魔王23号は倒せなかった。
それでも――。
田んぼだけは、守り抜いた。
ナイトは静かに画面を見ながら言った。
「まずは、休戦か」
日が、少しずつ傾いていく。
戦場にも、夕暮れが訪れていた。
やがて空が暗くなる――。
レインは夜空を見上げる。
「夜はお休みの魔王なんだね」
アイリスも頷いた。
「そうみたいね」
ナイトは、少し考える。
「なら、明日が本番だな」
レインは静かに頷いた。
三人は、再びカメラスの配信コメントを確認する。そこには、今日の戦いを見届けた視聴者たちの言葉が並んでいた。
『田んぼを守ったのは評価したい』
『勇者さんたち、よくやった!』
『明日が本番だなっ!』
『何か策を考えて!』
『このままじゃ倒せないぞ!』
レインは、黙ってコメントを見つめる。
「勇者さまたち……この後、どうするんだろう?」
アイリスがレインを見る。
「このままじゃ勝てないわね?」
ナイトも続けた。
「何か策が必要だな」
レインは、しばらく窓の外を眺めた。
コメライス村の青田が、夜の風にそよいでいた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




