第118回「撤回する」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
スイゴウ村が蝗害に襲われた翌日――。
無数の黒い影は、アサザ村へ届こうとしていた。
その情報は王城にも届いていた。
王城では、朝から緊急の対応が進められている。
「勇者アルス一行を、アサザ村へ出動させる!」
王城からの指示を受け、アルスは力強く頷いた。
「了解!」
アルスたちは、急いで出発の準備を始める。
しかし――。
今から出発したとしても、アサザ村への到着は翌日になる。それまでに、魔王23号が村へ到達しないという保証はない。
一方――。
人々の間では、別の問題が広がり始めていた。
魔法通信のコメント欄には、疑問や不満が次々と書き込まれている。
『勇者の討伐発表は誤報だった?』
『魔王23号、普通に生きてるじゃん!』
『撤回を希望するっ!』
『騙されたっ!』
『じゃあ、あの発表は何だったんだ?』
怒りの声が、次々と流れていく。
もちろん――。
王城に悪意があったわけではない。
勇者アルスたちは、確かに魔王23号と戦った。魔王の姿は消え、戦闘も終わった。魔石こそ確認できなかったものの、致命的な攻撃を与えた。
その状況で、討伐したと判断すること自体は、決して不自然なことではなかった。
だが――。
結果として、魔王23号は生きていた。
王城は、正式な発表を行うことを決めた。
魔法通信を通じて、王国からの声明が世界中へ届けられる。
人々が、その言葉に耳を傾ける。
「先日の魔王23号に関する討伐発表について」
「討伐成功との発表を、撤回いたします」
ざわめきが広がった――。
王城からの声明は続く。
「勇者アルス一行は魔王23号と交戦しましたが、致命打を与えた後、魔王23号が出現しなかったため、討伐完了と判断しておりました」
「しかし――」
「魔王23号が再び出現したことを確認しました」
そして――。
「先日の発表は誤りであったことを認め、ここに撤回いたします」
正式な声明が終わる。
人々の間に、ざわめきが広がった。
『撤回した……』
『ちゃんと認めたな』
『でも、今度こそ頼むぞ、勇者!』
『アサザ村を守ってくれ!』
不安の声――。
それでも、勇者への期待もまた、確かにあった。
そして――。
勇者アルスは、アサザ村へ向かっていた。
そしてまた、魔王23号も――。
ゆっくりと、確実に、アサザ村へ近づいていた。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




