第117回「現地の声」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
緊急配信が続く――。
レインは、カメラをまっすぐ見つめていた。
「まだ詳細は分かりませんが……」
一度、言葉を区切る。
「魔王23号が現れました」
アイリスが続ける。
「以前、スイゴウ村付近に降臨した魔王ですね?」
「そうです!」
レインは頷いた。
緊急事態――。
それでも、慌ててはいけない。
伝える側がパニックを起こせば、見ている人たちも不安になる。
レインは、ゆっくりと息を吸った。
そして、落ち着いた声で言葉を選ぶ。
「あたしの魔王予報では……」
カメラの向こうにいる人々へ、確実に情報を届ける。
「現在、魔王23号はアサザ村に向かっているようです」
その瞬間、アイリスがカメラへ向かって呼びかけた。
「アサザ村の皆さん! 避難行動をお願いします!」
コメント欄が一気に流れ始める。
『アサザ村の人、逃げて!』
『王城は対応してるのか!?』
『そもそもスイゴウ村は大丈夫だったの?』
レインは流れていくコメントを確認していく。
その時――。
ひとつのコメントが目に入った。
『スイゴウ村です』
レインの目が止まる。
続けて、コメントが流れてくる。
『青田が狩られた』
『全部ヤラレタ』
『人的被害はないが、田んぼは全滅』
レインは、画面をじっと見つめた。
隣にいたアイリスも、言葉を失っている。
ナイトが低い声で呟いた。
「田んぼが……」
レインはコメント欄を見ながら尋ねる。
「人的被害はないんですね」
すぐに返信が届いた。
『今のところは』
『でも、田んぼは本当に全部ダメです』
『黒いバッタにやられた……』
レインは静かに息を吸った。
そして、カメラを見る。
その表情から、いつもの明るさが消える。
「魔王23号は……驚異魔王です」
レインは、さらに続けた。
「そして……蝗害の魔王です!」
コメント欄がざわめく。
『蝗害……?』
『バッタってことか?』
レインは頷いた。
「はい」
そして、分かっている情報を整理して伝える。
「大量の黒いバッタに分裂して、田んぼを襲っているようです」
ナイトが呟く。
「それで、青田が……」
「はい」
レインの表情が、さらに引き締まる。
田んぼを守ること。
それは、農家にとって大切なことだ。
だからこそ……今、伝えなければならない。
「アサザ村の皆さん」
レインはカメラの向こうを見つめる。
「そして、その周辺の皆さん」
レインは落ち着いた声で呼びかける。
「今は田んぼを守ろうとせず、まず自分の安全を確保してください。魔王が近づいています」
そして、頭を下げる――。
「避難をお願いします!」
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




