第112回「黒い影」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
レインが魔王23号を予報してから、数日後。
スイゴウ村付近――。
そこには、勇者アルスたちの姿があった。
勇者アルス。
聖女カタリナ。
賢者ミネルバ。
そして、王国騎士団。
彼らは魔王23号を討伐するため、この場所に来ていた。
そして――。
目の前には、一体の魔王が立っている。
アルスは聖剣を構えた。
「……行くぞ!」
一気に地面を蹴る。
「はぁっ!」
アルスが魔王へ斬りかかった。
ズバッ!
聖剣が魔王の身体を捉える。
「グ……」
魔王がよろめいた。
その直後、異変が起きた――。
魔王の身体から、小さな黒い影が無数に飛び出した。
「なっ……!」
アルスが目を見開く。
黒い影は地面へ落ちると、まるで生き物のように這い始めた。
一つ……二つ……十……。
それどころではない。
無数の黒い影が、周囲へ向かって一斉に散らばっていく。
「何だ、これ……!」
アルスが振り返る。
騎士たちも警戒して剣を構える。
しかし――。
黒い影は、ある程度まで広がると、まるで最初から何もなかったかのように、消えた。
静寂が戻る。
アルスは、魔王がいた場所を見つめた。
そこには――何もない。
「……倒したのか?」
アルスが呟く。
しかし、ミネルバはすぐに首を横に振った。
「待って」
彼女は周囲を確認する。
そして――。
「魔石が出てないわ」
「何?」
アルスが振り返る。
カタリナも魔王が消えた場所を確認する。
「でも……姿もありません」
魔王の身体もない。
魔石もない。
ただ、何もない場所だけが残されている。
アルスは眉をひそめた。
「……どういうことだ?」
「分からないわ」
ミネルバも険しい表情を浮かべる。
カタリナが不安そうに尋ねた。
「消滅した……のでしょうか?」
「魔王なら魔石が残るはずよ」
ミネルバの言葉に、アルスは黙り込む。
やがて――。
アルスは周囲を見渡した。
「全員、周囲を捜索!」
声が響く。
「何か残っていないか調査する!」
「了解!」
王国騎士団が一斉に動き始める。
騎士たちは周辺へ散開し、地面や草むらを調べていく。アルスは、その場から動かなかった。
先ほど黒い影が消えた場所。
そこを、じっと見つめている。
「……何だったんだ?」
答える者はいない。
風が吹く。
草が揺れる。
それだけだった。
その頃――。
遠く離れたコメライス村では。
今日も穏やかな時間が流れていた。
青々とした青田が、朝の風に揺れている。
ヒナタの笑い声が聞こえる。
マカモたちが田んぼを歩いている。
コメライス村には――。
まだ、何も起きていなかった。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




