第108回「天まで届くよ」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
レインは、楽しそうにブランコに乗るヒナタを眺めていた――。
何度も揺れるブランコ。
そのたびに、ヒナタの笑い声が庭に響いている。
そんな姿を見ているうちに――。
レインの中に、ある考えが浮かんだ。
「ヒナタちゃん!」
「なーに?」
ブランコに乗ったまま、ヒナタが振り向く。
レインは得意げな顔をした。
「ブランコってね!」
「一人でも漕げるんだよっ!」
「ホントにー?」
ヒナタが目を丸くする。
「……」
その隣で、アイリスが黙り込んだ。
嫌な予感がする、そんな顔だった。
「お手本みせまーす!」
レインはすでにやる気満々だった。
ブランコに腰を下ろす。
そして――。
ゆっくりと足を動かし始めた。ブランコが下がるときは足を閉じる。上がるときは足を伸ばす。
タイミングを合わせて、身体も前後に動かしていく。
ギィ……。
ギィ……。
最初は小さかった揺れが、少しずつ大きくなっていく。
ヒナタは目を輝かせた。
「すごい! 一人で出来るんだ!」
「そう!」
レインは嬉しそうに答える。
そして――。
レインは満面の笑みで言い放つ。
「あたしはブランコマスター!」
魔法通信のコメント欄が一気に盛り上がる。
『かっけー!』
『天気予報士、魔王予報士に次ぐ肩書き!』
『ブランコマスター!』
『新しい才能が開花した』
そして――。
レインはさらにブランコを漕ぎ始めた。
ギィーン!
ギィーン!
ブランコが、さっきよりも高く上がっていく。
「わぁー!」
ヒナタが歓声を上げる。
レインは風を受けながら、楽しそうに叫んだ。
「どうだー!」
さらに高く……さらに大きく……。
「天まで届くよっ!」
アイリスが下から声をかける。
「レイン! 無理は良くないよ」
ナイトはカメラを構えたまま、レインを見上げていた。
「まぁ、これくらいなら?」
「え?」
アイリスがナイトを見る。
「まだ大丈夫だろ」
ナイトは冷静に答えた。
「レインなら、このくらい平気だ」
「……」
アイリスは黙ってレインを見る。
その瞬間――。
「まだまだー!」
レインがさらに勢いをつけた。
ブランコが大きく揺れる。
「ほら、やっぱり!」
アイリスが叫ぶ。
ナイトはしばらく黙っていた。
そして――。
「……ちょっと高いな」
「でしょう!」
アイリスが即座に返す。
それでもレインは楽しそうだった――。
青空の下。大きな木の枝から吊るされたブランコが、大きく、大きく揺れている。
「わーっ!」
「わははー!」
ヒナタの笑い声が響く。
レインの笑い声も重なる。
コメライス村の庭には、今日も穏やかな――。
いや……少しだけ賑やかな時間が流れていた。
読んでくれてありがとうございます!
この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




