第107回「楽しいイス」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
――何して遊ぼっか?
ヒナタの問いかけに、レインは腕を組んで考え込んでいた。
「うーん……」
隣では、アイリスもレインの様子を眺めている。
「何か思いついた?」
レインは答えず、村長の庭を見渡した。何か遊べるものはないか。庭を見回していると――。
「あっ!」
レインの目が輝いた。
レインは、庭の一角に立つ大きな木を指差した。
「これだっ!」
「……木?」
アイリスも木を見上げる。
大きな枝が、ちょうどいい高さに伸びていた。
レインは、何かを思いついたように笑う。
「ちょっと行ってくる!」
そう言うと、レインはコシヒコのところへ走っていった。
「コシヒコさん!」
「ん?」
「ちょっとお願いがあるんですけど!」
レインは、自分の考えを説明した。
話を聞いたコシヒコは、庭の大きな木へ目を向ける。
「なるほどな」
少し考えてから、頷いた。
「それなら、板と丈夫な紐があればできそうだ」
「お願いします!」
レインは嬉しそうに頭を下げた。
それから、しばらくして――。
板と丈夫な紐が用意された。
レインは、それを見て目を輝かせる。
「これで遊ぶっ!」
アイリスも、何を作るのかすぐに分かった。
「あぁ、それね!」
ナイトも大きな木を見上げる。
「懐かしいな」
「何々ー?」
ヒナタだけは、まだ何が始まるのか分かっていない。
レインたちは、大きな木の枝に丈夫な紐を結んでいく。その先に板を取り付ける。最後に、しっかり固定されていることを確認して――。
「できたー!」
庭に、新しい遊具が完成した。
ヒナタが興味津々で近づいてくる。
「なにこれっ?」
目の前にあるのは、紐で吊るされた一枚の板。
ヒナタは首を傾げた。
「イス?」
レインは胸を張る。
「そうっ! めっちゃ楽しいイス!」
アイリスが、くすっと笑った。
「ブランコっていうの」
レインも頷く。
「座って、こうやって揺らすんだよ!」
レインが実際に乗ってみせる。
板に座り、足で地面を蹴る。
ゆらり……ゆらり……。
「ほら!」
ヒナタの目が、どんどん輝いていく。
「ブランコっ!」
レインも笑顔になる。
「じゃあ、乗ってみよう!」
「うん!」
ヒナタが嬉しそうに駆け寄った。
コメライス村の庭に――。
新しい遊びが、ひとつ増えた。
◇
「ヒナタちゃん、座ってー!」
レインに促され、ヒナタはブランコの前に立った。
目の前にあるのは、紐で吊るされた一枚の板。
ヒナタは少しだけ不安そうな顔をしている。
「大丈夫なの?」
「大丈夫!」
レインは自信満々に頷いた。
そして、すぐに付け加える。
「でも、しっかり掴まってないと危ないっ!」
「えぇー!」
ヒナタは驚きながらも、両手で紐をぎゅっと握った。
その様子を、ナイトが女神のカメラで撮影している。魔法通信の向こうからも、さっそくコメントが流れ始めた。
『ブランコか!』
『最近みないなっ!』
『初めてブランコ!』
『ヒナタちゃん、楽しめるかな?』
ヒナタが恐る恐るブランコへ腰を下ろす。
レインは、その様子を確認すると笑顔になった。
「じゃあ、いくよー!」
「うん!」
レインがブランコの後ろへ回る。
そして――。
ゆっくりとヒナタの身体を押した。
「そーれっ!」
ふわっ――。
ブランコが、ゆっくりと動き始める。
「わー!」
ヒナタの声が響いた。
最初は小さかった揺れが、少しずつ大きくなっていく。
前へ……後ろへ……。
そして、また前へ……。
「すごいっ!」
ヒナタの顔から、不安が消えていた。
レインは笑顔で尋ねる。
「どう?」
「楽しい!」
その答えに、アイリスも嬉しそうに笑った。
「ヒナタちゃん、上手!」
「はっはー!」
レインも満足そうに笑う。
「楽しいー! あはーっ!」
ヒナタも声を上げる。
ブランコが揺れるたび、ヒナタの笑い声が庭いっぱいに響いていく。
何度も……何度も……。
ヒナタはブランコを楽しんだ。
その様子を、少し離れたところから村の人たちも眺めていた。
コシオが笑う。
「楽しそうだなぁ」
「ええ」
コマチも嬉しそうに頷く。
コシヒコは、揺れるブランコを見ながら感心したように呟いた。
「こんな遊びがあるんだなぁ」
ナイトは、そんな光景を静かにカメラへ収めていた。魔法通信の向こうでも、穏やかなコメントが流れている。
『いいなぁ』
『こういう配信好き』
『平和だ……』
『ヒナタちゃん、めちゃくちゃ楽しそう』
『ずっと見ていられる』
青田を渡ってきた風が、村長の庭を吹き抜ける。
青々とした稲とブランコが揺れる……。
そして――。
「わーい!」
ヒナタの楽しそうな笑い声が、コメライス村の庭に響き続けていた。
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この作品は不定期で投稿してます。
※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




