第96話「裏目の全村避難」
※本作は「小説家になろう」と「カクヨム」に重複投稿しています。
「こっちだ!」――。
ナイトが、紅貝の魔王の前へ飛び出した。
ガンッ!
女神のカメラで、紅貝の魔王の爪を受け止める。
「まだまだ!」
次々と繰り出される爪を、ナイトは必死に受け流していく。一撃ごとに、腕へ重い衝撃が伝わる。
それでも――。
ナイトは一歩も引かなかった。
レインは――。
神ナリの剣へ魔力を送り続けていた。剣に集まる魔力が、少しずつ強くなっていく。しかし、まだ一閃を放つ状況ではない。
「まだ撃てない……!」
アイリスも、ナイトを支え続ける。
「身体強化!」
杖から放たれた光が、ナイトの身体を包み込む。
「助かる!」
ナイトは力を増した身体で、再び紅貝の魔王の前へ出た。
そして――。
田んぼではコシヒコが動いていた。コシヒコはアミを構える。田んぼの中を這うクリムゾンシェルへ狙いを定めた。
「そこだ!」――サッ!
アミですくい上げる。
「一匹!」
捕まえたクリムゾンシェルを、田んぼの外へ運び出す。
「もう一匹!」――サッ!
すぐに別の個体へ狙いを定める。
一匹……また一匹……。
コシヒコは、少しずつ確実にクリムゾンシェルを取り除いていった。
このまま続ければ、田んぼを守れる……。
その時だった――。
「グギャー!」
紅貝の魔王が吠えた。
その直後――。
紅貝の魔王は田んぼへ向かっていく。
「なにっ!?」
コシヒコが振り返る。
紅貝の魔王は、またしてもクリムゾンシェルを撒き始めた。田んぼへ、赤い生物が次々と放たれていく。
「また増やしたのか! くそっ!」
コシヒコは、すぐにアミを振るった。
「そこ!」……一匹。
「こっちだ!」……もう一匹。
さらに別の個体へ走る。
「よし!」
必死に回収していく。
だが――。
取り除く速度よりも。
紅貝の魔王が新たに撒く速度の方が速かった。
「くっ……!」
コシヒコの額に汗が浮かぶ。
捕まえても、また増える。
減らしても、それ以上に増えていく。
少しずつ……少しずつ……。
田んぼに残るクリムゾンシェルの数が増えていった。
そして――。
紅貝の魔王へ流れ込むエネルギーも、さらに大きくなっていく。
コシヒコは考える……。
このままでは、田んぼは守れない。
紅貝の魔王も、ますます強くなってしまう。
コシヒコは、苦笑した。
そして、一瞬だけ手を止める。
「ふっ……これなら……」
田んぼを見つめながら、ぽつりと呟いた。
「全避難しない方が良かったか?」
村人たちは、もうここにはいない。安全な場所へ避難させた。それは間違いなく必要なことだった。
しかし――。
村人全員で動けば……。
クリムゾンシェルを取り除く速度は、もっと速かったかもしれない。
魔法通信端末にコメントが流れる――。
『村の人たち、全員避難しちゃったもんな』
『人手が圧倒的に足りない……』
『コシヒコさん一人じゃ厳しいぞ』
コシヒコは、黙って田んぼを見つめた。
しかし……ふと、顔を上げる……。
「……いや」
何かを思い出したように、目を見開いた。
「まだいるじゃねぇか!」
コシヒコの顔に、笑みが戻る。
「村の仲間がなっ!」
田んぼの向こうを見る。
コシヒコは、力強く笑った。
さっきまでの迷いは、もう消えていた。
「まだ終わっちゃいねぇぞ!」
田んぼを守るために、コシヒコは再び走り出した。
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※本作の作中に挿入されている画像は、AI生成によるイメージイラストです。




