異世界、閂、図鑑。
「起きて……起きてってば!」誰かに呼び起こされ、閉じていた目を開ける。
「ここは……?」開いた目に、最初に映ったのは古びた木造の小屋の様だ。随所に小さな穴や、汚れなどがあり屋根には穴が有り青空が顔を出していて、とても人が住んでいるとは思えない有様だった。
そんな事よりも声がした方へ顔を向けると、そこには自分にとって何よりも大事な彼女と瓜二つの姿が在った。
「よかった……無事だったんだね……。」思わず涙ぐみながら安堵の感情に包まれる。
「全然起きないから心配したわよ。かなり若返ってるし、どうなってるの?」困惑する彼女に、目が覚める前にあった出来事を掻い摘んで説明した。
「つまり今、私がこうして居られるのも黒い神様のお陰って事ね。感謝しておかないとね。」そう言うと彼女はキョロキョロと、周囲の様子を伺い始めた。
「辺りに人が結構いるわね。人里の中の小屋みたい。」彼女は耳を澄まして外の音を拾ったのか、そう告げた。
「となると何時、人が此処に入ってくるか判らないね。とりあえず、入口に閂でも掛けようか。」そう彼女が提案し、自分は頷いて行動を開始する。
崩れた屋根の瓦礫の中から手頃な木材を引っ張り出し、こちらもすぐにでも崩れそうな木製の扉に閂を掛ける。
「とりあえずこれで外からは開けられないはず。……壁ごと崩れそうな気もするけどね。」そう独り言ちながら、小屋の状態に一抹の不安を覚えたが、ぐっと飲みこむ。
「それじゃあ、今のうちに状況を整理しましょ。さっき神様に色々貰ったって言ってたわよね?その確認でもしてみる?」彼女の言葉に頷き、まずは一番気になっていたデバイスの操作をしてみることにした。
「確か意思で動かせるようにしてあるって神様は言ってたけど……。こうかな?開け。」そう言葉にしつつ頭の中でも念じると、左手の甲から見慣れたUIが淡く光りながら浮かび上がった。
表示された映像を見てみると、元の世界で使ってたデバイスとほぼ等しく表示されており、自分が使いやすいようにカスタマイズしていた部分も同じ様子であった。
「あれ?これは……?」その中に見覚えの無いアプリケーションが有る事に気づき、首を傾げそのアプリケーションを起動してみることにした。
「これ神様が出してたステータスか。それに図鑑?辞書?」起動したアプリに表示されたのは、いつか見た自分のステータスと辞書や図鑑といった、この世界における便利ツールの様な物だった。




