罪、宝石、三種の神器。
【これで二つ……。】神様は更に身体の色が薄くなり、消え入りそうな声で言った。
「神様……それ本当にまずいんじゃ……?」先ほどより身体の色どころか存在感まで希薄になり始めた神様を案じ声をかけた。
【さっきも言っただろう?気にしなくていいんだ。それよりも次だよ。これが最後の一つ、僕が君にしてあげられる最後の事なんだ。】やはり良くない影響が出ているのか、これまでの軽いトーンではなく少し辛そうな声音で言葉を紡ぐ。
「これ以上は頂けません……。もう限界なんじゃないですか……?」辛そうな声音に何故ここまでの事をしてくれるのか自分にはまだ解らなかった。
【はは……確かに君の言う通りだけど、それが役割だし死ぬわけじゃないしね。それに君にやってほしい事も有るし、その為の投資みたいな物と考えてよ。】本当に辛いのか、力なく笑いながら神様はやはり自分を気遣って話す。
「やってほしい事って……?」気を抜くと涙が零れそうになるが、それを必死に堪えながら望みを聞く。
【それは今は教えない。……君は元の世界で間違いも、罪も犯した。だが善良ではあった。そんな君ならきっといずれ辿り着く。その時に君が正しいと思うことを成して欲しい。それが今の僕の望みだよ。】自分はそんな善良な人間ではないと思ったが、言葉にするのをぐっと堪え首を縦に振る。
それを見て満足そうに神様は話し出す。
【さぁ最後の贈り物だ。君が元の世界で所持していた物を一つ、不壊の加護を付けて壊れないように、ちゃんと使用できる状態でこの世界に持ち出せるようにするよ。】
「……私が最後に着けていたウェアラブルデバイスを。」悩む余地はない。彼女の次に大事な物と言っていい。選択肢は無かった。
【了解したよ。それじゃあ受け取って欲しい。】神様の身体が百合の花に同化するように白くなっていく。
身体の黒が指先に集まっていき、私の左手に触れた。
黒が形を変え、左手の甲にまるで神様が宿ったかのように菱形の黒い宝石が埋め込まれた。
【形は少し弄らせて貰ったよ。流石に元のままじゃ目立つからね。ステータスと同じように操作できるようにしてある。意思で操作も出来るから試してみるといいよ。】もう殆ど存在感も無く、意識してようやくそこに居ると感じられる程度になってしまった神様は続けて言う。
【これにて三種の神器の譲渡を完了するよ。殆どすっからかんだけど、折角だからできることは全部やるよ。】神様はもう何処にいるかも分からなかった。声だけが響き、それでもまだ何かをしようとしていた。
【これはおまけ。14歳まで肉体の時間を巻き戻すよ。強くなる時間は多いほうがいいからね。後は搾りカスになるけど少し通貨を。先立つものは必要だからね。これが精いっぱい。】
もう声すらも微かにしか聞こえない。少しの間の関係だったけれど確かに神様は自分を愛してくれていたと感じた。もう堪えることは出来なかった。
【さぁ目を閉じて。何、これで終わりって訳じゃない。またいつか会える時を楽しみにしているよ。マコト君】名乗ってないにも関わらず名前を呼ばれ驚いたが、言われた通りに目を閉じる。瞼越しに柔らかな光が目を包む。いつかの閃光と違って安心する暖かさだった。
そうしてまた意識を手放した。
そして誰も居なくなった花畑で百合の花だけが静かに揺れていた。




