褒美、加護、素材。
角を差し出し、皆に緊張が走る。ユピーは角をまじまじと見つめた後、口を開いた。
「……共に数百年生きて来た我が角を折るとはな。……見事。」ユピーは感慨深そうに呟いた。その声音は実に穏やかで、角を折った事に感心していた。
「……怒ったりはしておらぬから安心せい。数十年もすればまた伸びてくるわ。」セラがとんでもない事をしてしまったと顔を青褪めさせていたが、ユピーは笑い飛ばした。
「して、汝等三人の中で角を折ったのは誰かの?」その問いにおずおずとセラが挙手をした。手を上げたセラをユピーは上から下までじっくりと観察し、告げる。
「ふむ、エルフの娘か。細腕に似合わぬ剛の者だったか。」そうユピーはセラを評価し、続ける。
「……その腕に見合う褒美をせねばならぬな。」賞賛され、たじろぐセラにユピーは指を伸ばし、セラに近づけた。よく見るとその指がうっすら光を帯びている事が分かった。
「その……此れは一体……?」差し出された指には鋭い爪があり、人間の喉笛など簡単に掻き切れそうな見た目をしていた。その指に、少し緊張しているセラに説明がなされた。
「エルフの娘、汝に我が加護をやろう。我が力は雷、意識して魔力を練れば今以上に身体を疾くする事も、遠くへ声を届ける事も出来る様になるであろう。」ユピーは伸ばした爪の先をセラの額に当てた。指先の光がセラに吸い込まれると、ユピーは指を元の位置に戻す。
「我が加護、確かに授けたぞ。エルフの寿命ならば努力を惜しまなければ極みに至れるだろう。精進せよ。」セラは緊張から解き放たれた途端、加護を得たと伝えられ嬉しそうにユピーに、精進いたします!と頭を下げていた。
「さて……汝等二人には何をやろうかの。」ユピーの言葉に慌てて背筋を伸ばす。まさか此方にもあるとは。
「……それなら私達も加護が良いわ!強くなれるのよね?」彼女がユピーに堂々と声を掛けた。
「加護をやりたいのは山々だが、生憎とそう一度に何人にも渡せぬのでな。代わりにこれをやろう。」徐にユピーは自らの左手を出し、右手に魔力を纏わせ、そのまま出した左手の爪を全て切った。それから左腕から数枚の鱗を剥がしその場に落とす。
「腕の良い職人ならば加工もできるだろう。見たところ装備も碌に揃えてないと見える。加護よりも実用的であろう。角も、杖でも剣でも好きな物に変えると良いわ。」此方の装備の貧弱さからユピーは気前良く自らの身体の一部を差し出した。
「……こんなに宜しいのですか?」流石に貰い過ぎでは無いかと思い確認する。
「良い良い。どうせそのうち角と同じで生えてくるわ。汝等には迷惑をかけた、文字通り命を賭けさせてしまった事だろう。せめてもの詫びの気持ちと思って欲しい。」ユピーほどの強者が素直に非を認め、自らより矮小な人間に謝るとはなんと高潔な龍であろうか。
「そう云う事でしたらありがたく頂戴します。ありがとうございます。」心から感謝を伝え、頭を下げる。そのやり取りを見ていたセラが口を開いた。
「……じゃあ雷轟龍様もこう仰ってるし、角も二人で使いなさいね。」先程の相談をユピーの前で確定されてしまった。ここまで言われてしまったら受け取らざるを得ないか。此方が黙ったのを見てセラは満足そうに笑った。




