貴重品、接近、対話。
歩きながら取り出した角に、セラは慌てて口を開く。
「マコト君すぐにしまって!……そんな貴重品取り出しちゃ駄目よ。判る人が見たら問題になりかねないわ。」そう注意され、すぐにバッグの中に仕舞う。確かに不注意だったかも知れないと反省し、セラと相談を続ける。
「……不用心でした、すみません。……それでエリとも相談したんですが、此の角はセラさんに渡そうと思いまして。」そう言ってエリに視線を送ると、彼女は頷き口を開いた。
「この角はセラさんが貰うべきよ!貴女が居なかったら折れなかったんだから当然よ!」功労者はセラさんよ!と譲る事を支持した。
「……そう云う事なので受け取って貰えませんか?」此方に異論は無いとセラに伝える。
「……此の角は受け取れないわ。私が居なかったから折れなかったと言うけれど、逆よ。貴方達が居てくれたから私の剣がユピーに届いたの。だからそのまま貴方達が貰って頂戴。」セラは角を受け取ろうとはしなかった。それならば売却して三人で等分するかと考えていた時だった。周囲を見渡しながら警戒していた彼女が空の一点を見つめて動かなくなった。
「エリ?どうかした?」僕の言葉に食い気味に彼女は声を上げた。
「……何か来るわ!警戒して!」彼女の言葉にセラは剣を抜き、僕は偽装の剣を構えた。彼女が示した空に黒い点が見え、徐々に大きくなってくる。それはすごい速度で此方へと接近してきていた。
段々とその輪郭がはっきりと見えてくる。それは二枚の大翼を持ち、その巨体に無数の傷を付けた額に折れた角を持つ雷轟龍ユピーだった。
警戒する我々の前に、降り立ったユピーからは、敵意を感じられない。それでも警戒を解かずにいるとユピーが一つ唸り声を上げた。
「……汝らが我の角を折った者達か……。」重厚でいて、荘厳な響きのある声が聞こえた。その声に全員が驚き、ユピーに注目する。
「そう警戒せずとも良い。戦う意思は無い。むしろ感謝と謝罪を伝えに来たのだ。」ユピーの言葉に三人で目を合わせ、剣を下す。
「……感謝ですか。一体何が起こってたのですか?」龍と会話をすると云う異世界ながらの出来事に困惑しつつも情報を得るために質問をする。
「……何が起こったのかは我にも解らぬ。北の地にて普段と変わらぬ日々を過ごしておった。突然若い女の声が聞こえた途端、嫌な予感がした事は覚えておるが、その後目が覚めたら全身至る所が痛むわ、角は折られておるわでな。」ユピーは暴走していた時の記憶は無かったと話した。
「街を一つ襲撃した事は飛び回り情報を得たので知っておる。後に権力者と連絡を取り謝意を伝える気でおるが、それよりもまず我を正気に戻してくれた者達に逢おうと思ってな。」ユピーの言葉に相槌を打ちつつ、言葉を交わす。
「どうして正気に戻したのが私達だと判ったんですか?」ユピーに対し失礼にならない様に問う。まずはコミュニケーションを取る事が理解への第一歩だろう。
「……それは先程、我の角の力を探知したからだ。汝らが持っておるのだろう?」その言葉に頷き、エリがおずおずと折れた角を差し出した。




