化粧、覚悟、履行。
「これで良し!準備できたわ!」彼女は満足そうに声を上げ、セラのメイクが終わった事を告げた。あれからエリと共に、錬金術を使って化粧道具を揃えてセラの支度をしていた。かれこれ二時間程掛かっただろうか。
セラは鏡に映る自らの姿に、これが私……?と驚いていた。エリによる現代メイク術は、此方の世界では新鮮に映る様だった。
「……セラさん。それじゃあ外に行きましょうか。」その言葉にセラは軽く頷き、ベッドに眠るカイルを一瞥し、決心した様に立ち上がり歩き出す。それに追従する様に部屋を後にし、三人で窓から見える庭に向かう。
「……これからカイルさんの魂を呼び出して、僕に憑依させます。憑依させられる時間はそう長くは無いと思います。」恐らくカイルの生前の強さだと長くは維持出来ないだろうと、セラに説明する。
「憑依は一度きりで二度と使う事は出来ません。……それでも宜しいですか?」聞き直すのも酷だと思ったが、セラの為を思い最終確認をする。もし今ではなく、いつか僕が強くなってからなら、時間は伸びるかも知れないとも正直に伝える。
「……平気よ。……きっと今じゃないと、もう二度と会う覚悟が出来ないと思うの。……だから……お願いしてもいいかしら……?」セラは途中で悲しみが込み上げて来たのか、目に涙を浮かべ言葉には寂しさが溢れていた。
「……解りました。それではセラさん、憑依の準備をしますので目を閉じて下さい。エリが合図するまで開けずに、心の準備を。」セラは一つ深呼吸をした後指示通りに目を瞑った。
セラが目を閉じたのを確認して、準備を始める。彼女に後は任せたよと、目配せをしてから唱える。
「……カモフラージュ、変装。」セラに聞こえないように小声で呟き、明確にイメージする。
淡い光が身体を包み込む。数秒の発光の後、そこに立っていたのはカイルの姿だった。憑依させても肉体はそのまま変わることはないので、カイルにまず変身したのだった。
「……死霊術、履行。」出来るだけ長く維持すると覚悟を決めて唱える。手の甲の宝石から淡い光が放たれ、僕の胸を照らした。光を浴びていくうち、徐々に意識が遠のいていく。自分ではない誰かが身体に侵入し、次第に自分との境界線が曖昧になり、身体を明け渡した。
「……セラさん。もういいわよ。マコトが頑張っている間しか話せないからしっかりするのよ。」エリちゃんが私の肩を叩き合図してくれる。しっかりと瞑っていた両目を開けると、驚いたように目を見開き固まっている愛しの夫の姿が在った。




