覚醒、撃退、宣告。
カイルとの契約を終え、セラを看病している彼女と合流するべく歩き出す。視線の先では彼女がブンブンと音が聞こえそうな程腕を振っており、その仕草に軽く嘆息しながら近付いていく。
セラも無事ならそのうち目を覚ますだろう、その時カイルの事をどう伝えようかで頭が一杯だった。
最期を看取ったお医者さんはこんな気分なのかと、考えが纏まらぬ内に二人の傍までたどり着いてしまう。
「……セラさんは?」寄り添っていた彼女にセラの容態を聞く。
「バイタルなら安定してるわ。このままだとそう時間も経たない内に目が覚めると思うわ。……そっちは?」彼女は問題はないわと笑顔を見せ、彼女の質問には首を振って答えた。
「……そう。セラさんになんて伝えようかしら……。」その仕草で彼女は悟り、同じ悩みを抱えた様だった。
二人で俯いていると近くで何かが動く音が聞こえた。ハッとして視線を向けると、ユピーが目を覚まし此方の様子を観察していた。
「……っ!」角は折り黒い靄は散ったが正気に戻っているとは限らない、そう判断し何時でも動けるように彼女と共に倒れたセラの前へ出て、身構える。
一秒が一時間に感じるほどの緊張感を伴い対峙していると、ユピーは先程とは打って変わってグルルと小さく唸り、ボロボロの身体を大翼の羽搏きで浮かび上がらせどこかへ飛び去って行った。
「……撃退成功……ってところかな。」酷く精神的にも肉体的にも消耗し、その場にへたり込む。
「襲われてたら一溜りも無かったわね!」彼女はユピーへ向けていた両手を下し、警戒を解いた。背後で動く気配を感じたのか彼女は振り返り、声を上げた。
「セラさんが目を覚ましたわよ!」最大の脅威が去り、胸を撫で下ろしたのも束の間、先程の悩みと向き合う事となった。
「……二人とも無事だったのね……。ユピーは……?」セラはゆっくりと身体を起こし、此方の無事を確認しつつ辺りを見回していた。
「セラさんも無事で良かったです。ユピーは先程どこかへ飛んで行きました。……我々が勝ちましたよ。」事の結末を伝えると、セラはとても安堵した様に息を吐きだした。
「……セラさん、もう一つ伝えなきゃいけない事が有るわ。」黙っていた彼女が神妙な面持ちでセラに語り掛ける。その様子から嫌な気配を感じたか、セラは固唾を呑んで次の言葉を待った。
「……カイルさんが、セラさんを護り旅立ちました。」彼女が口を開くのを制し、自分からセラに正直に伝えた。
「……そう……なのね……。」考え得る最悪の出来事にそれ以上の言葉を無くし、セラの表情が悲しみに染まる。大粒の涙を浮かべながらも唇を引き締め、決して嗚咽を上げたりはしなかった。




