双眸、雑談、微笑み。
彼女がユピーに殴られ、雨で抜かるんだ地面に一直線に叩きつけられたのを見た時、戦況が悪い方向に動き出したのを嫌でも理解した。彼女に声を掛ける間も無く、セラが着地し撤退の命令を叫んでいた。
そのセラの悲痛な覚悟を込めた命令に、角の破壊が失敗した事を悟る。
「……駄目だったか。それなら……。」呟き、セラを連れての撤退も考えながら、倒れたまま動かない彼女の方を見やると視界の隅、セラ夫婦の家から一人の男性が杖を片手に玄関から出てくるのが見えた。
こんな時にと驚き、カイルの方に注目すると、カイルは震える手で杖を構え、杖に魔力を溜め始めた。
「……一体何を?……!」カイルの姿を改めて観察し、ふと予感めいたものを感じ急いで行動に移る。本日二度目の神頼みか……等と思いながら倒れ伏した彼女の元へ走る。横目で見た弱々しいカイルの双眸には、はっきりとした意志の光が灯っていた。
「エリ!起きて!起きてってば!」彼女を抱き起こし、呼び掛け続ける。衣類の損傷は激しいが、外傷は無し、脈拍、呼吸共に正常。それでいて目を覚まさない。普通であれば覚醒まで待つが、今は緊急事態なので手っ取り早く行く事に決める。
そっと彼女の顔を右の掌で覆い、そのまま親指と人差し指で彼女の鼻を思いっきり抓んで引っ張る!
「……痛あああああああい!」彼女は痛みに一瞬耐えたが、すぐに覚醒した。というか狸寝入りしていただけだった。
「マコト!傷付き倒れた乙女に何するのよ!こういう時は王子様のキスが必要って習わなかったの!?」抓んだ鼻を放してやると、彼女は抗議の声を上げた。
「……誰が王子様だよ。今は緊急事態だから急いで。……カイルさんが何かするよ。」拗ねた様子で彼女は立ち上がり、服がボロボロね!と言いながら、身体に付いた土を払っていた。カイルが何をするかは解らなかったが、どうなってもセラは救出できるように彼女に指示を出す。
「……これから僕は動けなくなるからね。よろしく頼んだよ、エリ。」彼女が頷き走り出したのを見て、準備を始める。
「……死霊術、霊爆」最後の作戦の後、新たなスキルが生えていた。一定時間の溜めが必要だが、爆発を起こすスキル。恐らく現状一番威力の出るスキルだろうと、生命の書の記述から推測した。
「……溜めてる間は動けないけど、起爆のタイミングは此方で選べる……。限界まで溜めさせて貰うよ。」そう独り言ち、カイルの様子を窺おうと目を向けた時、セラが限界を迎え足を止め、カイルがセラの方向に向けて杖を構えたのが見えた。
「セラさん!構えてっ!」脳裏にセラとここまでの道中で交わした雑談が過ぎる。あの話が本当ならばと、精一杯大きな声でセラに向かって叫ぶ。
セラは言葉に反応し剣を構え、カイルは剣の構えを見て仄かに笑った様に見えた。
轟音と爆風、その二つがセラを巻き込みユピーへと放たれた。




