ドラゴン、仲間、魔法使い。(2)
轟音、そして爆風。風は土砂や岩をも巻き込み、一直線にユピーへ向かう。その中心にいるセラには、包み込むように柔らかな風が、その身体をユピーへと押し運んでいた。
セラは満身創痍にも関わらず、その顔に笑みを浮かべながら剣に魔力を込めていく。既に消耗は激しく、限界まで酷使した身体の何処にそんな力が残っていたのかセラ自身にも分からなかった。
「……あぁやっぱりこの風は心地いいわね。」走馬燈のように数々の冒険が去来する。その全ての冒険には、優秀な魔法使いの姿が在った。『剣が好きなら気が済むまでやれ。』嘗て、その魔法使いに背中を押され、エルフでは異端な剣の道を選んだ事。彼と毎日の様に特訓した事。此れまでの全てが今、この瞬間に繋がっている事に嬉しさが込み上げてくる。
もうユピーの罅の入った角しか眼に入らない。このまま叩き切る、その一念だけを支えに剣を構える。
そしてユピーは眼前に迫る、圧縮した嵐の様な魔法と、その中心に居るセラの気迫に、一度退避することを選ぶ。大翼を力強く羽ばたかせ、嵐の範囲から己が肉体を逃がそうと試みた。
しかし横合いから大きな爆発の様な衝撃を受け、逃亡を妨害されてしまう。
「……そうはさせませんよ。」開いたままの生命の書に、新たな記述を示す感嘆符が現れている。先程の攻防の際、ジョブの習熟度が上がった事により新たなスキルが目覚めていた。
横が駄目なら上へと、ユピーは更に逃亡を企てる。
「……あら?此処まで盛り上げてくれたのに、そそくさと帰るなんてあんまりじゃない?」上昇しようとしたユピーの首、両の翼にアンカーチェーンが絡み付く。
ユピーは忌々し気に咆哮を上げ、最早逃れられぬと、角に溜めた雷撃を眼前に迫ったセラに向け解き放つ。
「……はあああああああ!!!」角から放たれた雷撃が眼に入らないかの様に、ただ真っ直ぐに剣を振るう。
セラを貫くかと思われた雷撃は、セラを包み込んだ風によって逸らされ遥か後方へと流れていく。
そして轟音と風に剣技を乗せ、雷轟龍の角へカイルとセラの秘技が炸裂した。
あれ程頑丈だった角は、罅の入っていた部分から見事に断ち切られ、爆風に巻き込まれた瓦礫により、身体にも数多くの傷が刻まれていく。
ユピーの絶叫が周囲に響く。意識を失ったユピーはそのまま落ちて行き、その巨体が地面に大きな音を立てて墜落した。
「……やったわね……。」セラは朦朧とする意識の中、愛する夫に抱かれている様な感覚を覚えながら地上へ落ちていった。




