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彼女の隣で、僕は眠る  作者: 粗川燕(あらかわつばめ)
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偽装、会心、奇跡の終わり。


 龍の独壇場とも云える空中に於いて、人間に抗う術を持っている種はほんの一握り。そんな危険地帯に彼女は迷う事無く、飛び込んだ。

 ユピーの背を一度蹴り、角を目印に頭部の方向へ飛ぶ。



 「あの娘、なんて無茶するの!?それに魔力で脚力強化までしてるじゃない!一体何時の間に……。」セラは自らが行っていた魔力強化を、観察により学習されたとは露とも知らず驚愕を浮かべる。

 「セラさん!此方へ!エリならきっと何かやります!」セラに声を掛け急ぎ合流する。

 「これからあそこまで行く足場を作ります!不安定ですが何とか登り切ってください!」その言葉にセラはどうやってあんな空中に行くの?と訝しんだが、説明をする時間を惜しみ実行に移す。


 「……カモフラージュ、偽装!」腰に佩いた偽物の剣を抜き、空へ向け構える。剣の姿が蜃気楼の様に揺らぎ、その姿を変貌させていく。

 そこに現れたのは、宙に居るユピーに軽く届く、()()の様なあまりにも巨大すぎる大剣だった。

 「殺傷能力は無く,ただの張りぼてですが実体は有ります!行ってください!」二度目の驚愕に放心していたセラが説明を聞き再起動する。その様子を確認し、刃を横にしてユピーの頭に向ける。目隠しと足場の両立の為幅広に作った剣身をセラが駆け上がり始めた。



 一足飛びにユピーの頭上に飛び出た彼女は細い鎖を角に巻き付け、それを引く事で推進力とし両足に魔力を纏い全力で頭部を踏みつけた。大翼に鎖を巻きつけられ、其方に意識を向けている最中の頭部への強襲にユピーは一瞬目を回した。

 角の前に着地し、そのまま魔力を纏った右足で角を蹴りつける。

 「……硬あああああい!」あまりの硬さに涙目で悶絶し、八つ当たりとばかりにユピーの眉間に踵を打ち付ける。

 「……エリちゃん退いて!」セラはスキルで作られた超巨大剣を登り切り、エリが角に攻撃を加えた時から力を溜め始め、八つ当たりを見てから声を掛けた。

 「……これでどうだああああ!!!」今までの冒険者生活に於いて、今が最高威力と思えるほど限界まで力を注ぎ込んだ全力の剣を角に向け薙ぐ。エリが止め、マコトが道を作り、全員で協力したからこその千載一遇に全てを賭ける。


 ユピーは己が頭の上で湧き上がった巨大な力を感じ、意識を取り戻し反射的に抵抗を試みた。

 セラの剣が届く寸前、目の前の角が発光し、溜めが無い分威力の低い雷撃がセラの肩を打ち抜いた。僅かに、本当に僅かに力点がずれ、渾身の剣は当たれど角に軽い罅を入れたのに留める。

 愕然とするのも束の間、ユピーが大きく首を振りセラが宙へ投げ出される。


 己が角へ確かに損害を与えた人間に、ユピーは右の拳を振り抜く。

 投げ出され身動きが出来ぬセラに迫る巨大な拳。終わりを覚悟しセラは目を閉じる。

 そして予想よりも遥かに弱い、横合いからの衝撃に目を開くと、長い黒髪が舞い、エリが目の前で巨大な拳に殴り飛ばされていた。

  

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