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彼女の隣で、僕は眠る  作者: 粗川燕(あらかわつばめ)
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神頼み、玄人、作戦会議。


 降りしきる雨の勢いが幾らか弱まり、強く吹いていた風も何時の間にか凪いだ。時折迸る稲光と音に家屋の窓が軋んでいた。

 幾度かの光と音の後、雷光が周囲を照らす事も無く、音だけが鈍く轟いた。



 「…………ぎっ!」全身全霊を込め振った一撃は、狙いを違う事無くユピーの角を捉えた。

 しかし両手で握り締めた斧を振り抜く事は出来ず、まるで鉄パイプで電柱を叩いた時の様な反動の痛みを両の手に伝えた。

 ユピーはギロリと己の誇りである角に一撃見舞った人間を睨み付け、角に力を溜めていく。

 「……クソッ!」文字通り目と鼻の先、斧を叩き込んだその角から、お返しだと言わんばかりに光が満ちていく。この至近距離では避ける事も錬金術で避雷針を作る事も間に合わない。それでも命を守る為に足掻く。

 痺れの残る両手で斧を角と自分との間に放る。運が良ければ斧が避雷針代わりに雷撃を逸らしてくれる筈と、神頼みにも近い賭けだった。


 角の輝きが強くなり、ユピーが雷撃を放とうと首を起こそうとした瞬間、首の枷が消失し重さが無くなった事で勢い良くユピーの首が跳ねる様に上を向いた。

 突然の事に目を見開きつつもユピーは顔を此方に向け狙いを定め、雷撃を放つ。


 投げ出された斧の柄に細い鎖が絡みつき、雷撃の射線上に斧が投げ込まれ雷撃が直撃する。ユピーの眼前で眩い程に発光し、思わずユピーが目を閉じる。

 「……神様って居るもんだね。」ユピーの目が開く前に二人の下に駆け寄り、助けてくれた彼女にお礼を言う。

 「何言ってるの?マコトは神様に会ってるじゃない!」彼女は幾らか回復したのか、立ち上がりドヤ顔をしていた。

 「……マコト君良くあんな無茶できたわね……。あんな事、普通の新米冒険者じゃ出来ないわよ。」セラが先程の攻防を褒めてくれていた。その表情は呆れ顔だったが。


 「そんな事よりあの角すっごく硬かったです。熊の時のセラさんの溜め攻撃じゃないと折れる気がしません。」まだ手が痺れていますと、震えている両手をセラに見せながら呟く。

 「問題はどうやって溜めを作る時間を稼ぐか、どうやって当てるかの二つね。」セラが必要な条件を述べていく。ユピーが回復するまでもう時間もないだろう。急ぎ作戦を決める。


 「やっぱり私が動きを止めるしかないわね!さっきはあまりの負荷に処理落ちみたいになっちゃったけど、もう慣れたわ!一本や二本なら普通に出せるから安心しなさい!」彼女は得意気にそう言った。恐らくスキルの習熟度が上がったのだろう、先程より明らかに顔色が良くなっていた。

 「じゃあ僕がユピーの気を引いて時間を稼いで、エリがバランスを崩すタイミングで拘束、セラさんが臨機応変に決めるって感じで行きましょう。」そうセラに伝えるとため息を付きながらセラが口を開く。

 「……私だけほぼ丸投げじゃない。まったく……。」

 「この中で一番の玄人ですからね。頼みましたよAクラス冒険者さん?」半分煽る様にセラに発破を掛ける。セラは強張った表情を崩し、笑いながら言い返す。

 「言ってくれるじゃない、新人君。そこまで言うならしっかり陽動して頂戴ね!二人とも行くわよ!作戦開始!」


 セラの声に合わせ各々が前線へ展開していく。その様子を雷轟龍と呼ばれるドラゴンは咆哮と共に、開いた目で睨み付けていた。

初めての評価を頂きました。とても嬉しく思います。今後とも宜しくお願いします。

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