援護、標的、最大火力。
己を縛っていた忌々しい鎖が無くなり自由になった巨体を以って、倒れ伏した鎖を生み出す人間を屠らんとユピーが動き出す。杭によって傷ついた右手を握りしめ、まるでトラックの如きサイズの拳を振り下ろした。
前のめりに崩れ落ちる彼女の姿に、いち早く反応したのはセラだった。強靭な脚力から爆発的な加速を生み出し、彼女とユピーの間に入ろうと飛び出した。
「……だあああああ!」巨大な拳が振り下ろされたとほぼ同時、自らの剣の間合いに入ったセラは拳に対し平行に剣を打ち付ける。あまりの質量、重さに全身が悲鳴を上げる。それでも種族特性の膂力に加え、全身に魔力を纏った上でようやく軌道を逸らす事に成功する。
「エリちゃん!大丈夫!?」彼女は意識は有る様で、先程のセラの動きを備に観察していた。セラはすぐさまエリを抱え、戦線から離脱させようと試みる。
このまま逃がしてなる物かと言わんばかりに左手を目一杯広げ、目障りな蠅を払うかの様にセラと彼女を目掛け薙いだ。
「……錬金、鉄壁」二人と、ユピーの左手の間に鉄の障壁が立ち塞がる。セラに遅れて前線へ辿り着き、セラ達の離脱を援護する。
ユピーは鉄の壁が現れた事で、右手を傷つけられた事を思い出したか、左手を反射的に止めた。
「……助かったわ!……マコト君!?」その隙を見逃さず、セラはエリを抱えて下がろうとする。そして腕の中のエリが両手をユピーに向けている事に気付く。
「エリ!目標、角の破壊!……開放!」ユピーがたじろいだ一瞬の隙を見逃さなかったのは、セラだけではなかった。ユピーへ向かい、走り込みながら彼女へ標的を伝え唱える。
「……まったく……人使いが荒いわね!」彼女はセラに抱えられながらアンカーチェーンを一本、ユピーに向け放つ。その一本は真っすぐ、最短距離でユピーの首に絡みつく。
右手を逸らされ、左手も空中で止まっており、突然首に大質量の鎖が巻き付き引っ張られた事でユピーの頭が地面に引き摺り降ろされる。
「……喰らええええ!」すべてが鉄製で通常の物より遥かに重い片手斧を、両手で担ぐ様に構え振り抜く。狙いは一点、彼女によって引き摺り降ろされた頭に聳える一本の角。スキルを乗せ、今出せる最大火力の攻撃を出し惜しみする事無く叩き込む。
フルスイングした斧は、ユピーの黒い靄を纏った一本角に吸い込まれる様に叩きつけられた。




