絶望、避雷針、幕開け。
降りしきる雨、轟く雷、稲光が照らす小さな村の片隅に巨大な絶望が降り立っていた。
「……冗談キツイって……。」見るだけで理解できる、その戦力差。いつかセラが言っていた、逃げるが常。当たり前だと思った。こんなの勝てる訳が無い。
「マコト!防ぎなさい!」彼女の言葉に絶望に塗り潰された思考に理性が戻る。ドラゴンの立派な一角にバチバチと帯電しているのが見えた。
「やば……!錬金!」玄関外の地面に手を着き唱える。玄関から2メートル程離れた位置に地面から鉄柱を六本、等間隔に精製し生やす。鉄柱を造ったとほぼ同時、ドラゴンの角から一条の閃光が瞬いた。遅れて轟音、先程聞いた物と同じ音だった。
「……何とか間に合った……。」雷がドラゴンの攻撃だと当たりを付け、賭けでは有ったが錬金術で避雷針代わりの鉄柱を地中の鉄分から精製したのが、功を奏しドラゴンからの初撃を凌ぐ事に成功する。
「流石ね!マコトなら出来ると思ってたわ!」彼女が手放しで褒めてくれるが、耳に入らない。心臓が破裂しそうな程叫んでいた。
「二人とも!今のは!?」カイルに肩を貸しながらセラが居間に戻って来た。セラは外に見えるドラゴンの姿に驚きの表情を浮かべる。
「一角の巨竜ですって……?まさか……雷轟龍ユピー?」セラはドラゴンに心当たりがある様子で呟く。ドラゴンが自らの雷撃を防いだ鉄柱を警戒し様子を窺ってる間に情報交換する。
「セラさん倒せますか?」緊急事態なので短く簡潔に聞く。
「……無理よ。場所によっては神と崇められているドラゴンよ。でも理性がちゃんと有って人に友好的な存在の筈なのに……一体……?」セラはカイルを居間の椅子に下し、用意されていた愛剣を抜く。
「この距離じゃ逃げるのも無理ね……。何とかして退けるしかないわ。」悲痛な面持ちで、セラは剣を構えた。
「じゃあまずはこの家から引き剝がさなきゃね!」彼女が言いながら飛び出し、ユピーと呼ばれる龍から大きく右に走り抜ける。
ユピーは飛び出した彼女を目で追い、角に帯電を始めた。
「よっと!」彼女の足元から二本の鎖が飛び出し、ユピーの角に巻き付く。直後、巻き付いた鎖が眩く発光し、煙を上げた。
「……なんだあれ……?靄……?」発光の際一瞬だけ角に靄が纏わり着いているのが見えた。訝しんでいると彼女が声を上げた。
「マコトの真似させて貰ったわよ!セラさん!マコト!今の内よ!」彼女の言葉にセラがまず家から飛び出し、ハッと意識を戻し、遅れて家から出るついでに鉄柱の一本に手を当て唱える。
「錬金……!」鉄柱の姿をユピーに攻撃が通りそうな重さの有る片手斧に変化させる。
「準備できたわね……。二人ともちゃんと指示には従ってよね。……戦闘開始!」
セラが叫び、雨の中死闘の幕が上がった。




