報告、避難、轟雷。
「お話は分かりました。ダンさん、それで兵士の方は今どちらに?」セラは返答を待たず、外套を纏い始めた。
「すぐ近くまで来て貰ってるよ、緊急の話で直ぐにでも伝えたいんだそうだ!」ダンはセラにそう告げると玄関から顔を出し、例の兵士がいるのであろう方向に手招きした。程なくしてダンと同じくずぶ濡れの帯刀した若い男が現れる。
「Aクラス冒険者のセラ殿ですね?取り急ぎ、ソーマリヲン領主様、及びソーマリヲン冒険者ギルド長から緊急のご連絡です。」現れた兵士はソーマリヲンからこの村まで寝ずに早馬を駆って来たのだろう。その顔からは焦りと不安、疲れがありありと浮かんでいた。
「聞くわ。一体何が有ったの?」セラは真剣な表情で、兵士からの報告を待つ。重苦しい緊張感がその場に充満していた。
「昨日早朝、ソーマリヲンに於いてドラゴンによる襲撃を受けました。被害は中程度、国軍常備兵及び冒険者ギルド、錬金術師ソーマ様の防衛機構により撃退。傷を負ったドラゴンはそのまま王都方面に飛び去りました。」兵士から伝えられたのは、先日まで滞在していた街が、ドラゴンに襲撃されたとの信じがたい出来事だった。
「ダンさん!村の人全員を王都へ避難誘導、急いで!何も無ければ笑い話で済むわ!責任は私が持ちます!」セラは兵士の報告を聞くや否や、顔の利くダンに指示を出す。ダンは何も言わず外に飛び出し、村の中心に走って行った。
「二人とも聞いてたわね。緊急事態よ。これから私達は、カイルを連れて村の人達を護衛しながら王都へ向かいます。急いで準備して。」セラの決定に異を唱えず、荷物をまとめる。
「私はこのまま王都へ急ぎ、国軍へ報告を致します。道中御武運を。」若い兵士は、セラに騎士の礼をした後、駆け足で玄関から出て行った。
「私はカイルを起こして連れてくるわ。エリちゃん、私の荷物と装備を出しておいてくれる?そこの棚に全て揃ってるからお願い!マコト君は台所からそのまま食べれるような食料を幾つか詰めておいて!」セラは言うが早いか、カイルの部屋に向かった。
指示された通りに彼女が動き出したのを見て台所に向かおうとした時だった。耳を劈く程の空気を切り裂く轟音、そして閃光、叫び声。
開け放たれたままの玄関の扉から反射的に外を見る。視線の先には、全身から煙を燻ぶらせている若い兵士。そして巨大な体躯と、大剣の様な太い爪、獰猛な牙を持ち、額に一角を備えたドラゴンがそこに居た。




