信頼、相談、寄り道。
「気になる事は色々出来たけど先ずは、アレを何とかしましょう。」セラは背後のマッドネスベアの死体を指差した。セラにジョブなどを打ち明けるつもりだったが、一先ず現状の片付けとなった。
セラ監修の元、討伐証明部位や、金銭的価値のある毛皮など時間は掛かったが、僕と彼女の二人で処理を終える。残った肉は臭みが強く食べられない為、錬金術で穴を掘り埋葬した。
「これで取り敢えずは良いわね。」空は既に白み始めており、あと一刻もすれば朝日が顔を出すだろう。その前にと三人で、既に役目を終え、薄く煙を出すだけの焚き火の周りに腰を下ろす。
深く息を吐き、一呼吸置いてからセラが切り出した。
「答えたくないのなら無理には聞かないわ。飯の種ですもの、切り札は伏せるのは当然よ。」そう前置きしつつ、先程の戦闘で気になった事を問うてくる。
「……お気付きではあると思いますが、僕は錬金術師では有りません。」意を決しセラに語り出す。セラは無言で頷き続きを促す。
「本当の僕のジョブは死霊術師です。死者の魂から情報を引き出したり、魂を消費して生前その魂が持っていたスキルを行使する事が出来ます。」黙っていたのは人によって忌避する可能性が高い為、と説明した。
「なるほどね、理由は判ったわ。私はジョブに思うところは無いから大丈夫よ。」話してくれてありがとうと、セラは笑みを溢す。
「特殊ジョブですもの信頼のおける人にしか話さないのは正解だわ。これからもその調子で用心しなさい。」やはり誰彼構わず、此方の情報は与えない方が良いと確信を持った。
「それであの熊が、ギルドで注意されていた魔物なんでしょうか?」一先ずの安堵を覚え、セラに確認する。
「十中八九そうでしょうね。普段は森の深層部にいる魔物だし、本来ならAクラス三人、もしくは二人とBクラス二人くらいで安全に討伐できる位の強い魔物だからね。本当に危なかったわ。」そう言うとセラは立ち上がり、続きは歩きながら話しましょうと、燻っていた焚き火を踏んで消火し荷物をまとめて背負った。
夜営地を出て王都へは残り半分を越えた辺りでセラから声が掛かった。
「……ちょっと相談と言うか、お願いがあるんだけど。」
「お願いですか?お世話になってますし僕達に出来ることなら協力しますよ。どうしました?」セラの申し出に快く返事をする。
「このまま行くと私と夫が住んでる小さな村が有るのよ。講習の途中ではあるんだけど一度立ち寄らせて貰えないかしら?」夫の様子が心配で、と話すセラに彼女が声を掛ける。
「勿論いいわ!カイルさんにも会ってみたいしね!セラさんがあれだけ惚気てるんだもの、きっと素敵な人だわ!」彼女とは違うが、二つ名持ちの魔法使いには一度会ってみたいと思い、セラ夫婦が住む村へ立ち寄る事が決まった。




