死地、反撃、終戦。
僕を標的として突っ込んでくる巨大熊に一瞬だけたじろいだが、明確な死地に立った事で集中が増す。
「……開放。」極限の集中により時間が延びた様な感覚を持ちながら、固有スキルを発動する。眼前に迫った巨大熊の頭に手を付き、サーカス団員の様な、アクロバットを以って巨大熊の頭上を越え突進を躱す。着地し、偽装の剣を抜き呟く。
「開放。」 標的が居なくなった巨大熊は一撃を加えようと振り向いたが、振り向き様に偽装の剣を、振り上げようとした巨大熊の右手に思いっきり叩きつける。
「……硬すぎ。」巨大熊の右手を見ると果物ナイフで切った様に薄く血が流れていた程度だった。……偽装の剣じゃ殆どダメージが入らないのか。そんな考えを瞬時に捨て、左腕の攻撃に合わせ、サイドステップで身を躱し、偽装の剣を左目に突き入れる。
あまりの痛みに巨大熊は咆哮し、肉薄してきた所で五体に枷が掛けられる。
「ごめん!大丈夫?」彼女が駆け寄り射程距離に入った所で援護してくれていた。目を突き刺されても尚、鎖を切ろうと暴れている巨大熊の首に、背後から一閃が瞬く。鎖に繋がれ、立ち上がったままの状態で首が地面に落ち、辺りに血が広がる。
「……間に合ったわね。まさかこんなのと遭遇するとはね。」一撃を放ったセラはかなり消耗したのか肩で息をしていた。
「まずは全員無事な事を喜びたい所だけど、一つだけ言わせて貰うわね。私が出した指示に従う約束だったでしょう?結果が良ければいいって物じゃないの。」セラからの叱責を黙って受け止める。命令違反をしたのは此方だ。結果オーライとは云え、場合によっては誰かが死んでたかも知れないと反省する。
「でも正直助かったわ。Aクラスの魔物相手に単独じゃ厳しかったのも事実だし。……エリちゃん凄い強いわね。拘束師であんなに動ける人初めて見たわ。」真っすぐな賞賛に彼女は当然よ!と、誇らしげだった。
「マコト君も戦闘はからっきしだと思ってたのに最後のは何?今まで胡麻化してた訳?」セラに問い詰められ、どう説明しようかなと開きっ放しの生命の書に目を落とす。
スキルのタブにある記述、【開放】吸収した魂のスキルを一時的に使用できる。使用時間は魂の強度に依存する。このスキルを使って躱し反撃した事を説明するとなると、先ずジョブから説明しなきゃだな、とセラに打ち明ける覚悟を決めた。




