凄腕、魔法、必殺技。
「さぁそろそろ休憩は終わり!このまま進んで夜営できる場所を探すわよ。話の続きは歩きながらにしましょう。」その言葉に頷き、立ち上がり軽く屈伸をして身体を慣らし、忘れないように川から水筒へ水を補給する。
先程のやり取りで懐いたのか、彼女がセラに魔法使いの夫について根掘り葉掘り聞きながら歩いていく。夫との馴れ初めに始まり、なんで結婚に至ったか等、殆ど彼女が好きそうな恋バナだった。
「そういえば旦那さんのお名前はなんて言うんですか?」話の邪魔をしない様に会話が途切れたのを見計らってセラに問う。
「確かに言ってなかったわね。長く生きてると細かい事を気にしなくなっちゃうのよ。ごめんなさいね。夫の名前はカイルっていうの。」自慢の夫ね、とセラは胸を張って答えた。セラがどれだけカイルを大切に想っているかが分かる仕草だった。
「カイルさんはどんな魔法を使ってたんですか?良ければ教えてください。」あのセラをして凄腕と言わしめる魔法使いが気にならない筈も無く、素直に聞く。
「良いわよ。マコト君は後衛だし気になるわよね。夫は全属性使える万能型で、その中でも風の魔法を得意としていたわ。風爆なんて呼ばれ方してたわね。」二つ名持ちの魔法使い、そりゃ凄腕だと、思いながら何か参考になる事は無いかと集中して聞き入る。
「圧縮した風を竜巻の様にぶつける魔法が特に凄かったわね。瓦礫を風に巻き込み、威力を上げつつも、部分的な風の強弱をつけて、目標以外を傷つけない細やかな技術も見事だったわ。」話を聞いただけでも想像を絶する使い手と云う事は解った。どんなファンタジー作品でも目標の取捨選択など聞いたことが無い。得られる物は多そうだと、続きを待つ。
「相手が何か放ってきても、風で弾いて相殺もさせないほぼ必中の魔法よ。文字通り必殺技と言っていいわね。……そんな必殺技に私が乗るなんて無茶な事も練習させられたわ。構えろって言われると今でも反射的に準備しちゃうの。」セラはそう言って昔を懐かしむように笑った。もう戻らないのであろう思い出を今も大事にしている様だった。
「合体技!マコト!私たちも何か作りましょうよ!」彼女の琴線に触れたのか、無茶な提案をしてくる。そんな事が出来るようになるまで一体何年かかる事やら。
ワイワイと雑談をしつつ、セラから冒険者としての知識や技術を学びつつ歩いていると、辺りが赤く染まり始めていた。
「ここらで野営にしましょうか。……ちゃんと準備してきたのよね?」セラが心配そうに確認してくるので、待ってましたと微笑みをもって答えを返した。




