ドラゴン、仲間、魔法使い。
ソーマリヲンを出て既に数時間、日が高くなり僅かにだが気温が上がったのを感じながら歩き続ける。ここまで特に何も起こらず、長閑で牧歌的な風景を楽しみつつの行軍となった。
街道を真っすぐに一路、王都へと向かっていく。この街道沿いに流れる川は、北方の山岳地帯から王都、ソーマリヲンを通り、ローディアの街の先まで伸びていると云う。安定した水の供給源なのだそうだ。
「そろそろ少し休憩しましょうか。」ここまでトラブルも起こらず、加えて荷物が少ないのも有ってそれなりに早いペースで進んでいる様で、少し早い時間ながら一息入れようとセラから提案が有った。体力的にはまだ平気だったが、何が起こるか分からないので素直に応じる。
「セラさんは今までどんな冒険をして来たの?ドラゴンとか倒した!?」三人で軽めの昼食を取っていると、先に食べ終えた彼女が質問し始めた。確かに気になる話題ではあったので二人で聞く事にした。
「うーん、冒険者として結構長く活動してるけどドラゴンは倒したことは無いわね。そうそう見つかる訳じゃないし、遭遇しても勝てる戦力じゃなくて逃げるのが常よ?」ドラゴンスレイヤーなんて夢のまた夢ね、とセラは笑った。
「では、今まで戦った中で一番苦戦したのはどんな奴ですか?」剣士としてかなりの水準で在るだろうセラに、直截に聞く。この先でどんな敵に出会うか判らない、突破口になるヒントはいくら有ってもいい。
「……私はリッチみたいな死霊系の実体を持たない魔物が特に苦手ね。私の剣じゃ攻撃を与える手段が限られていてね。」あまり答えたくなかった質問なのか。セラは苦々しい顔をしながらも答えてくれた。……後で何かお礼をしないとな、と心の中で誓う。
「それじゃどうやって切り抜けたの?ドラゴンの時みたいに逃げ一択?」僕が続きを聞きにくそうにしていると、彼女が引き継いで聞いてくれた。……彼女にも感謝しないとな。
「答えは簡単よ、仲間が居たの。苦手なことは庇い合える仲間を貴方たちも見つけなさいね。」セラは少し昔を思い出したのか淋しそうに語った。
「あ……。ごめんなさい。私ズケズケと……。」そんなセラの様子で察したのか、彼女が申し訳なさそうにセラに謝る。
「気にしなくていいのよ、謝ることじゃないわ!皆まだ元気だし、加齢でちゃんと引退できたんだから!」セラは落ち込んでしまった彼女を励ますように慌てて言葉を紡いだ。
「それに、その内の一人は私の夫なの。凄腕の魔法使いだったわ。戦闘の後で徐々に戦えなくなってしまって、もう戦えないんだけどね。」セラの瞳に望郷と共に、深い愛情の光が宿る。とても美しい眼差しだと思った。




