寝不足、凶兆、出立。
「おはようございます。セラさん今日からよろしくお願いします。」まだ日も出ていない早朝、集合時間より少し早くギルドの前に訪れ、すでに待っていたセラと挨拶を交わす。
「おはよう。二人とも早いわね。感心感心。……まぁその様子だと単に眠れなかっただけだと思うけど、遅れなかっただけ良いわ。」どうやら夜更かししたのは御見通しの様だった。カモフラージュは発動してるのに……、と思いつつ欠伸を噛み殺す。
「いい年してお恥ずかしい。年甲斐も無く燥いじゃいましてね。」セラはその言葉にやれやれと云った仕草をしながら、此方の様子に疑問を持ったのか切り出す。
「……貴方達、荷物が随分少ないみたいだけど……。野営の準備は出来てるの?」そうセラは訝しんだ。それもその筈、此方の荷物は二人合わせても凡そ、一般的な野営込みの荷物の半分より少し多いくらいだった。
「これには訳が有りまして、問題は無いですし、そのまま向かえますのでお気になさらず。」後で説明しますよと伝え、セラからお許しが出たので良しとする。
「準備不足でも自己責任ってのが分かってるなら良いわ。それより困ったことになったの。」セラはそう言うと一枚の紙を此方に差し出した。内容を確認すると、どうやら王都へ向かう街道周辺で強力な魔物が出没し、通る人々や、冒険者に被害が出ているらしいとの報告書だった。
「セラさん昨日ギルド長に呼ばれてたのってこの件ですか?」多分そうじゃないかな、と当たりをつけつつ質問する。
「呼ばれてたのは私だけじゃないけどね。王都周辺のAクラス以上の冒険者に通達が来たのよ。遭遇した場合は可能であれば討伐されたし、ってね。」セラはそう言うと、真剣な表情で此方に問いかけた。
「一応確認よ。このまま王都へ魔物と遭遇する危険を呑んで向かうか、討伐の知らせが出るまでこの街で待機するかどうする?どっちを選んでも構わないわ。私はどうあれ家路には着かなければならないから。」セラは二つの選択肢を提示したが、この街で出来ることは終わらせてしまったし、荷物もまとめてしまった。何よりAクラス冒険者と同行できるなんて機会が今後また有るとは思えない。
エリを横目で見ると無言で了承の仕草を返してきたので、セラに返答をする。
「お邪魔じゃなければこのまま一緒に行かせてください。討伐を待っていたら何時になるか分かりませんしね。」そう伝えるとセラは幾つかの指示を出した。
「分かったわ。但し、件の魔物と思わしき生物と戦闘になった場合、私の命令には絶対服従、口答えは無し。逃げろと言ったら逃げる事。貴方達をフォローしながら戦える相手とも限らないのを頭に入れておいて。」此方の真剣な表情を見て、セラは安心したのか柔らかな表情に戻した。
「じゃあ準備が出来てるようだし。出発しましょうか。弱い魔物が出たら貴方達の戦いも見せて貰うわね。」こうしてまだ日も出ていないソーマリヲンの街を王都へ向けて出立するのだった。




