剣士、一の鐘、買い出し。
「何かほかに質問は有るかしら?」なんでも答えるわよ、と世話焼きな顔を覗かせ、此方に呼びかける。
「それなら一つだけ。セラさんは加護を持ってたり、何か特殊なジョブだったりするんですか?」なんでも答えるとの事だったので、踏み込んだ質問する。先程の一連のやり取りで垣間見た、気配を絶つ技術、或いはスキル。あの大柄な男の片手斧を素手で押さえつけた力、只の人と云うには余りにも差が有りすぎた。
「ジョブは普通の剣士よ?加護も無いわ。ただエルフの特性とでも言おうかしら?長い年月鍛えてると見た目より遥かに強靭になるのよ。だからエルフと戦うときは油断しちゃ駄目よ?」此方の疑問に躊躇いも無く答えたセラに、ジョブに関しては、元の世界の職業と変わらないと言っていた神様の台詞を思い出す。種族特性で強いなら逆に厄介だなと考える。
「あ、でも私を普通のエルフだとは思わないでね?エルフの中でも結構はみ出し者なの。普通のエルフは斥候職や、弓術師、狩人とか後衛ジョブか支援ジョブが多いの。私みたいな純粋な前衛ジョブのエルフは珍しいのよ。」 セラは続けてそう言った。確かにエルフと言えば弓というイメージは有るが、物語の中だけという訳では無いらしい。
後は……、とセラが言いかけた途中でテーブルへ近づく人影が有った。
「ご歓談中の所申し訳ありません。セラ様、ギルド長がお呼びです。御時間頂けませんでしょうか?」そう言って話しかけて来たのは、先程応対してくれた受付嬢だった。声を掛けるのも恐れ多いと、かなり緊張している様だった。
「あら。あの子も私を呼び出すなんて偉くなったものね。」そう言うとセラは此方へ向き直り、口を開いた。
「じゃあ貴方達はこれから野営の為の物資を集めて今日は早く寝なさい。明日の早朝、一の鐘が鳴る頃にギルド前で集合よ。」一の鐘と云うと午前4時頃か。少し早いが徒歩って事を加味すると、案外そうでもないのかも知れない。了承の旨をセラに伝えると、よろしい。とそのまま受付嬢と主にギルドの二階へと歩いて行った。
「さて僕らも行こう。まずは街でセラさんに言われた通りの物を買って、宿に置きに行こう。残った時間でこの街でやれる事を終わらせよう。」彼女に幾つかの指示と共にこれからの予定を告げ、人が少なくなったギルドを後にする。
翌朝、セラからまずい事になったと聞かされるとはこの時は思ってもいなかった。




