講習、準備、戦闘配置。
「貴方達、初心者講習は受けないの?」騒動が収まった途端に、野次馬をしていた人々が散開する様子を眺めていると、エルフの女性冒険者“セラ”はそう聞いてきた。
「そうですね。あまり何をするのかも分からないですし、知らない人と実地訓練というのも気疲れしそうで。」問いに正直に答える。
「……魔物の討伐証明部位とかは知ってるの?」セラの言葉に、ゔっと言葉が詰まりその理由を察してか、セラは少し意地悪そうな笑みを浮かべていた。
「それが解らなきゃ魔物を倒しても収入にはならないわよ。悪い事言わないから受けておきなさい。」セラは損するわよ、と怖い事を言いつつ受講する事を薦めてきた。
「あまり余計な時間は掛けたくないんですよ。」元々冒険者になるつもりは無かったのだ、多少の損くらい勉強代として受け入れよう、そう考え講習を受けない旨を伝える。
「そんなに急いで何処に行くの?見た所、旅人でしょ?商人でも無いし時間は有るわよね?」セラは捲し立てながら問いを投げかける。
「……友との約束を果たす為に情報の集まる王都へ向かってるんです。」目的の一つを答えセラの返答を待つ。セラはその答えを聞き、丁度いいじゃない、と口を開いた。
「王都へ行くなら私が実地講習してあげるわ。王都方面に明日帰る予定だったのよ。この先は魔物も多いし、一石二鳥じゃない?」断る理由、無くなったでしょ?とセラに押し切られる。
「異論はもう無いようね。それじゃ受付で申請しましょ。私も講習手当と護衛料が出るから、帰るだけなのに美味しいし。」
「解りました、それじゃあ講習よろしくお願いします。セラ教官。」セラは、かなり世話焼きの性分の様だ。報酬の話は此方に気を遣わせない為だろう、わざわざ言う必要無いし。
「これから一緒に行くんだから、堅苦しいのは無しでいいわ。セラと呼んでちょうだい。」
こうして初心者講習として臨時パーティーを組むことになった。
受付にて、初心者講習の諸々の手続きを終えた後、セラと今後の打ち合わせをする。ギルド内の酒場のテーブルに三人で座り、情報の交換を行う。
「今回は徒歩での訓練になるから、野営の準備をしておくこと。テントや毛布、食料など必要に合わせて用意しなさい。自分の許容量と相談して物資を厳選しなさいな。途中で魔物に遭遇したら、証明部位で荷物が増える事もしっかり計算に入れる事ね。」セラは野営時の道具選びや、どういった物が便利かを使用用途に合わせて教えてくれた。
「後は戦闘時の役割分担だけど、エリちゃんと私が前衛、マコト君が後衛ね。」セラは何も聞かず、戦闘配置を決めた。何も聞かれなかった事が気になったので、質問する。
「何故、僕が後衛なんです?エリと逆ではないですか?」
「マコト君後衛ジョブでしょ?足運びが前衛ジョブの動きじゃないもの。エリちゃんは逆ね。近接戦の達人みたいな動きしてる。さっきのパンチとかね。」意識してない癖の様な物を読まれ、咄嗟に足元を見る。
カモフラージュは万能じゃない……気を付けないと。そう思い気を引き締めるのだった。




