稼ぎ口、トラウマ、宝物。
「冒険者登録をして頂くと、依頼が受けられるのは当然として、解りやすい利点は身分証の信憑性が増す事ですかね。普通の身分証もギルドが発行している物なので、ちゃんと使えるのですが、冒険者登録もされていると、その人がどんな人間か、いつ何処で、どんな依頼を受け、どんな評価を受けたか。その人の人物評価と言いますか、人となりまで含めてギルドが保証する様になります。逆も然りですけどね。」それは結構な特典じゃないか、と頭の中で、算盤を弾く。
「後は、依頼を受けていなくても、人々に害を成す危険な魔物の討伐にも報酬が出る様になります。」その一言で殆ど、心が決まった様な物だった。
「では、冒険者登録もお願いします。」神様から貰ったお金も無限じゃない。稼ぎ口は用意して置かないと無くなってからじゃ遅いし。そう思い冒険者として登録することに決めた。
「それでしたら、此方の用紙に書ける所までで良いので記入をお願いします!あ、大丈夫だと思うんですけど、読み書きは出来ます?」この世界での識字率はかなり低いらしい。代筆なんかのサービスもある様だ。
「大丈夫ですよ。これくらいなら何とか書けます。」日頃から少しずつ時間を作っては事典を使って語学勉強してる成果が出ていた。
「私も登録するわ!面白そうだし、それにマコトと同じがいいわ!」静かに受付嬢とのやり取りを見ていた彼女は興味を持ったのか、受付嬢に冒険者になると宣言していた。
「……じゃあ彼女の分の書類もお願いします。」一人分有れば良いのにとは思ったが、折角楽しそうなのに水を差す事もないだろうと、受付嬢に二人分の申請をする。
「はい。確かに頂きました!では冒険者証を発行いたしますので、そのままお待ち下さい!」受付嬢は記入の終わった書類を、二枚受付の奥に運んで行った。
「これで冒険者ね!いよいよ異世界に来たって感じになってきたじゃない!」初めての肩書に興奮しているのか、声からウキウキとした感情が読み取れた。
「初日から僕は、異世界を実感してたけどね……。」数日が立ったが、未だに薄まってくれない胸の痛みを思い出し、少し憂鬱な気分になった。
「いつまでも引き摺るんじゃないの。しっかりしなさい!」彼女なりの励ましが心に沁みる。手厳しいね本当。
「お待たせ致しました!此方が二人分の冒険者証です!無くすと再発行手数料が掛かるので、くれぐれも注意してください!」恭しく差し出された二枚の冒険者証を受け取ると、彼女に一枚渡す。目を輝かせ、宝物の様に小さなポーチに仕舞っている姿を見て、憂鬱な気分が少し晴れた。




