ご機嫌、尋問、身分証。
「朝よ!起きなさい!」何時もの様に彼女に起こされる。目を擦りながら朝の挨拶を交わす。
「おはよう。今日は朝からご機嫌だね。」
「別に何時もと変わらないわ!さっさと支度して出かけるわよ!」やはり普段より機嫌の良い彼女は、まるで散歩に連れて行く前の飼い犬の様に燥いでいた。
急かされる様に身支度を終え、街へ出ると不意に声を掛けられた。
「おい!そこの二人、止まれ!」声に驚き振り返ると、街の自警団か国軍か、どちらにせよ剣を帯刀している男が歩み寄ってきた。
「お前達は旅の者か?この街には何をしに来た?」男は少し高圧的に問うてきた。あまり態度が良くないなと、少しだけ思うところが有ったが、ここで変に反発しても面倒が増えるだけだと、何時も通り丁寧に話す。
「ええ。私たちは旅をしており王都へ向かう途中、観光と補給を兼ねて此方へ立ち寄った次第です。」嘘はつかず、正直に言う。
「身分証は在るか?」しまった……。この世界そんな物あるのか。今まで必要とされなかったので、そんな物は無いと思い込んでいた。
「遠い異国の地よりこちらの国へ流れ着いたので、生憎とそう云った物は持ち合わせておりません。」嘘ではない。しかし疑われてる以上、何とかしてこの場を切り抜ける必要が有ると判断して、会話に応じる。
「確かに少し言葉に、おかしな響きを感じる。勉強はしている様だが、この国の者では無さそうだな。」真摯に答えたお陰か、納得してくれたと少し安堵する。
「其方の女は貴様の連れか?同郷の者か?」ローディアの殺人鬼と疑われているのだろうか、男は彼女の容姿を備に観察している。
「そうです。お互いに身寄りが無く、彼女と共に、この国まで旅をして参りました。」男の目を見て誠実に話す。
「ふむ。疑わしいが確証は無い。件の下手人かと思ったが、確証が無ければ捕まえる事も出来んか。だが監視は付けさせてもらう。良いな?」頷いたのを確認すると、男は大通りの先、盾を背に、剣が彩られている看板を指し示した。
「あそこは冒険者ギルドだ。この国での身分証が無いなら、あちらで登録をして身分証を作って貰うといい。受付で偽って申告するなよ。発覚した場合、捕縛対象になるからな。もう行って良い。」
「……焦ったよ。パスポート無くした外国みたいに連行されるかと思った。」その昔一度だけ、やらかした事を思い出した。
「とにかく言われた通り、あそこへ行って身分証を作りましょう。それだけで、ある程度面倒は減るはずでしょ?」彼女の提案に二つ返事で賛成した。




