そして、夜。
宿に戻り、受付で店主の奥さんに連泊するよう伝え、銅貨を支払い、そのままの足で食堂へ向かった。
店主に夕餉を頼み、朝と同じテーブルに着いて待つ。暫くして、料理を持った店主が此方へ歩み寄ってきた。
「お待たせしました。今日は鶏の香草焼きと、野菜のスープとパンですね。」ローディアの宿の店主より、若く、物静かな印象の店主は、料理を載せたトレイをテーブルに置くと、此方に気を使いつつも、おずおずと話しかけてきた。
「錬金術師様のお墓は行かれました?」
「はい。とても素晴らしい時間を過ごせました。紹介して下さって、ありがとうございました。」丁寧に店主にお礼を言うと、店主は嬉しそうに応える。
「綺麗な場所だったでしょう?お墓である場所を観光名所として、扱うのは少し気にかかりますが、錬金術師様は人と接するのがお好きだったと、伝えられておりますので、旅のお方にもお勧めしているんですよ。」誇らしげな表情で店主は、それではと会話を切り上げると、まだ仕事が残っているだろう厨房へ戻って行った。
愛されてるなと思いつつ、提供された夕餉に舌鼓をうち、自らの部屋へと帰った。
「じゃあ少し情報の確認しましょう。」部屋に帰り一息ついてから、彼女が切り出した。
「生命の書、開け。」頷き、事典を開き新たに記述が増えたスキルのタブを開く。
<ジョブ固有スキル> 契約 習熟度1 履行 習熟度0
「契約……。さっきは直感に従って使ったけど、どういうスキルなんだろう。」記述の契約の文字を長押しし、詳細な効果を確認する。
「発動条件……。一つ。死霊の遺志を継ぐ、又は遺志を果たす事。二つ。対象の死霊と“縁を持つこと”。縁の強度によって一つ目の条件が緩和される。」それでさっき発動できたのかと納得をして続きを読む。
「効果。契約した死霊の生前所持していたスキルの中で最も習熟度が高いスキル一つを継承する。……ソーマのスキルの継承……。間違いなく錬金術だな。」条件は厳しそうだが、かなり強力なスキルだと感じた。
「錬金術使える様になったのね!ちょっと何か作ってみましょうよ!」錬金術に興味を持ったのか彼女が囃し立てる。
「全部確認終わってからね。出来ることの確認なんだから、エリもちゃんと聞いて覚えておいてよ?」 彼女にそう指示をすると、はーい。と間の抜けた返事が返ってきた。
優秀な彼女の事だから心配はいらないが、自分の為にもと、声に出して次のスキルを確認する。
「履行。契約した死霊を憑依させ、人格の再現、及び全てのスキルを一時的に使用できるようにする。履行は一度きり。肉体の性能が契約した死霊より劣っている場合、発動時間が短くなる。」一時的に魂を降霊できるスキル。一度きりしか使えないのがネックだが、それでも状況を好転させたり出来るかも知れないと、履行に可能性を見出していた。
「一通り確認は終わったね。」生命の書を閉じると、日中頭を使ったせいか程よい眠気が襲ってきた。
ベッドに寝転がり、今日の出来事を反芻していると、彼女が笑みを浮かべ口を開いた。
「今日は私の事、殆ど構わなかったんだから付き合って貰うわよ。」どうやら今日はまだ眠れないようだ。
そして部屋の明かりが消えた。




