反証、検証、対抗策。
「此方を御覧ください。これは現存している限り、ほぼ全ての各為政者に関する記録、手記、歴史書など記述です。」示された新たな資料に食い入る様に読み込む。
「為政者の代替わりや、不慮の死。それは解ります。ですが、それと時を同じくして異才、異様な力を持った者、尋常ならざる知識を持つ者。まるで入れ替わるように為政者本人、またはその側に現れている。」その事実に目を見張る。見落としは無いかと何度も読み直した。
「王、王女、王子に始まり、皇女の侍女や、騎士団長、成り上がりの冒険者、果ては豪商まで。それまで歴史の一切に、名前が出すら来なかった人間がいきなり力を持つ。それが九百年。ここまで揃えば偶然とは行きますまい。」ソーマの言葉に最早反論の言葉は出なかった。
「そしてその全ての国において同一の宗教を、信仰しそれを国教としていることも解っております。此れは明らかに異常だ。何か意図を持って何者が国を操っているとしか思えない。そしてそれは組織などではなく、個人の思想に基づいて動かされている。」
「そうでなければ、動きの一貫性に説明が付かない。組織であれば動きに、不和がでたり、逸れたりするのが普通だ。それが全くと云っていい程ない。」それ以上の言葉は必要なかった。
「私は、何らかのスキルを用いて人を乗っ取り、現代まで生き長らえている者がいる。その方法は魂だと仮説を立て、研究し道半ばで力尽きた。」至極無念だという様な、顔でソーマは呟く。
「対抗策は作れなかったが、何者かが人々の宗教や信仰心を、利用しようとしてる可能性も考え、せめてもの抵抗として、この街における信心を私に向けるよう画策もした。性には合いませんでしたがね。」ソーマの人柄から察するに本当にやりたくなかったのだろう。その時代に死霊術師が隣に居れば、また変わったのだろうが、歴史に“もしも”は無い。ソーマに選択肢は無かったのだ。
「今現在でも、その者は暗躍しているだろう。せめてもの救いは、その者がこの二百年間何も行動を起こさなかった事。希望的観測は余りしたくないのですが、まだ、何かの準備が終わってない可能性がある事ですかね。」ソーマは続けて警鐘を鳴らす。
「事が始まってからではもう手遅れ、なんてことになりかねない。貴殿もくれぐれも準備を怠らぬよう。」本当にこの人は、本心から心配してくれていると感じた。




